なぜ彼に私の気持ちが伝わらないのか
「ねぇ浅野さん、どうして彼(夫)は、私の気持ちが理解できないんでしょう。」
「どうして彼は私の気持ちを聞かず、頑なでいるのでしょう。こんな人と関わったの初めてです。」
そんなお声を伺うことがありますね。
相手に伝わらない気持ちが、自分の要求ではなく「愛情」だとしたら、こんなに切ないことはないのかもしれませんね。
ただ、僕たちが生きていると「なぜか自分の思いが伝わらない」というできごとと出会うことも少なくないようです。
そこで今日は自我意識の成長という視点から「私の気持ちが伝わらない理由」について、簡単にまとめてみようと思います。
よろしければどうぞ。
私の気持ちが伝わらない心理的理由
もし、相手に自分の気持ちが伝わらないとしたら、相手はこのようなパターンを持っている可能性があります。
- 相手は自分の思い通りにしか行動したくないので、相手の意見を聞かない。
- 相手の意見には従う素振りを見せるが、実はバレなきゃいいだろうと考えているフシがあるので、自分勝手に振る舞おうという欲求がある。
- 自分の正しさ、ルールから逸脱する意見には耳を傾けない。
これらすべて「相手との価値観の相違」という言葉でまとめられちゃうことも少なくないのでしょうが、じっくり見つめるとその内容は違うものだと僕は考えています。
この根底には私たちの自我意識の成長プロセスが影響しています。
これが「今の自分の感情や他人との付き合い方」を示すものになります。
僕たちの自我意識の成長プロセス
僕たちの心、とかく自我の成長について簡単にまとめると、このようになります。
- 自分のことしか考えられない状態
- 他人の顔色をうかがえるようになり、自分の良心や道徳心などに従えるようになる。
理性でもって自分の行動を規制できるようになる反面、まだ好き勝手をしたいという欲求と葛藤し、自分の思い通りに振るまおうとする。(バレなきゃいいだろう) - 他人の顔色をうかがうばかりの状態から、自分の中に行動の規範を持ち、立派な社会人として行動できるようになる。(バレなくてもよくないものはよくない)
反面、自分のルールから反するものは厳しく批判・統制したり、自分の中のルールや正しさを貫くために人と対立し、戦争をしかけることもある。 - 「こうありたい自分」と「社会に合わせている自分」が統合され、「自分の意思」で社会に合わせた行動を取ることができる。
様々な葛藤を乗り越えて、自分の意思と責任で(他人のせいにせず)生きるようになる。
人のミスも罰せず、それを理解できるようになる。
この心の成長度合いは、とかく自分自身の抱えているニーズ(要求)の出やすい対人関係、パートナーシップの中において、特に色濃く表面化するものです。
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例えば
いつも夫(彼)は自分の気分でしか動かない、とか。
外面がよく、誰からも優しい人だと言われるけど、私の前では超わがままだ、とか。
夫は男性的な包容力がすごいけれど、一度意見をいい出すと絶対曲げないし、違う意見を言うと論破されちゃう、とか。
うちの旦那は私が何をしても理解してくれる、すごく優しくて器の大きい人なんです、とか。
特にパートナーに依存するタイプの人は「自分が愛する側に回った経験が少なく、愛する自信がない」ので、「パートナーが(自主的に)こんなにも愛してくれている」ということに気づけないものです。
また、パートナーと距離を取り自立のスタンスを取る人は、「自分が関わっても相手にいい思いをさせられないなら、そもそも一緒にいないほうがいい」と考えますから、「お互いがしんどい思いをするなら、自分のことは自分で考えたほうが楽じゃないか」と考え、相手の愛情に気づけなくなるものです。
もちろんこれ、いい悪い、という話ではないんですよ。
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これらに共通して言えることは、依存心(ニーズ)や傷(ハートブレイク)があるということでしょうか。
例えば、いつまでも自分の思い通りにしたいとか。
相手に従うように振る舞うけど、バレなきゃ自分勝手でもいいだろう、とか。
これらは満たされないニーズがあり傷ついた経験から、まぁ人のことはあまり考えませんよ、という状態ともいえます。
だからこそ、このような状態にいる人は「実は周囲に自分のことを真剣に考えてくれている人がいる」ことに気づかないようになるのです。
人の温かさ、お互いさま、持ちつ持たれつ、といった発想が持ちにくくなるのですね。
また、自分なりの正しさ以外は排除したくなるなら、どこか自分(の価値観・気持ち)を大切にされなかったという痛みがあり、だから「自分が傷つかないために、自分なりの成功法則」を見出した、という場合が多いものですね。
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このような人にとって、「自分にも愛されたい、人に大切にされたい気持ちがある」ということを認めることは困難なことです。
自分だけの世界、価値観で生きていきたいと願うことが、これいじょう人に傷つけられたり、気持ちを振り回されないようにする防衛的手段になっているわけですからね。
しかし、ここで自分の中にもそのような欲求があると認められると、そのマインドはより成長の方向に向かいます。
自分の中で「愛されたい」という気持ちを認めることができれば、「相手も同じなのかもしれない」と人の同じ気持ちを理解できるようになり、人に寄り添い、与えることができるようになります。
そして、この相手の気持ちを理解して与える行為を通じて、「愛されたいなんて依存で子供っぽい」という意見は持たず、「そうだよなぁ、相手だって愛されたいと思うよな」と理解できるようになり、上手に相手の気持ちを扱えるようになるのです。
そのような経験を通じて、人は「自分が愛するように、人も自分の【愛されたい】という気持ちを理解して、愛してくれるのかもしれない」と、「相手の愛情や思いを理解できるマインド」を手に入れることができるようになります。
すると「自分の意見を用いて相手の意見をはねのける」ような、競争や勝ち負けをつけるような発想自体にあまり意味を感じなくなるのです。
「相手の思いは自分に向けられたもの」として受け止めるようになり、そこに理解を示せる心の余裕、成熟さが生まれます。
もし、このようが二人が寄り添って生きることができるなら、そりゃ楽で楽しめる関係になると思わないでしょうか。
たとえ、お互いの間に不満や、意見の違いが生じても、それを受け止めあい、理解し合えるわけですから、とても円満な関係を保つことができるようになりますよね。
話を聞かないパートナーとの向き合い方
そう考えると、話を聞かないパートナーが最も信じられないのは「自分」なんですよね。
実は自分が「自分を愛してくれる人はいないだろう」と感じていると、つい自分勝手に振る舞ったり、パートナーの意見を聞かない状態になる可能性が高いのです。
そして人は自分への振る舞い、態度を人に与えるものですから、自分の価値を信じられていない人は、相手の価値も信じないし、批判的に扱うようにもなります。
だから、「私の意見を聞かない・思いを伝えても伝わらないパートナーのこと」で悩む方には、「まずあなた自身を癒やして取り戻しましょう」とお願いしていますし、その後で「まぁまぁあなたのできる範囲で愛してあげてみてください」とお願いしています。
もし、ここで話を聞かないパートナーをひたすら説得したり、ただ罰したいと思うなら、おそらく相手のパターンを強化するでしょう。
「ほら、俺の(私の)世界以外に信じられるものはなにもない。だから俺は(私は)人をアテにしないんだ」
といったふうにね。
もう「キーっ!」てなりません?
どの口が言うとんねん!とか思ったりしませんでした?
ただまぁ、自分が無理をし続けていたり、自分を疑い続けている(癒やされていない)状態で、相手を説得する方法を手に入れても、なかなかうまくいかないものなのかもしれませんね。
もちろん、説得や罰を使いたいぐらい、自分の思いを届けたくなっているあなたは、きっとパートナーを愛しているのでしょうし、きっと伝えたい思いが伝わらず悶々とされているのかもしれません。
だとしたら、思いが伝わらなくても、あなたは間違いではないし、罰がふさわしい人間ではないはず。
だからこそ、まず自分を大切にしてみてください。今までの自分を認めてあげてください。そしてより大きな自分になるために自分を見つめ直してみてください。
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同時に、少し考えてみてほしいんです。
パートナーに思いが伝わらず苦しい思いをしているあなたを、愛し、理解し、支えてくれる人っていないでしょうか?
家族、仲間、両親・・・そういった人にあなたが背中を向けていませんか?
遠慮して遠ざけていませんか?一人ぼっちで戦っていないでしょうか?
あなたが人の愛に背を向けて、あなたの世界だけで戦っていれば、相手はこう思うでしょう。
「君だって同じじゃないか。君だってひとりじゃないか。なのに俺になにを求めているっていうんだ。俺にだけ依存する気か?」
こう思われちゃうと・・・ねぇ。もう地獄じゃないっすか?
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あなたの思いが愛ならば、それは大いに伝えてあげてください。そして、相手が「自分の外側に信じられるものがある」と思えたなら、きっとその心をひらいてくるようになるでしょう。
もちろん相手が心を開くかどうかは、相手次第です。相手の痛み、恐怖、警戒心次第です。そして相手が心を開かない事情は相手のものなので、あなたの責任ではありません。
しかし、もし心を開かないパートナーを前に、あなたがなにを感じるかに関してはあなたの責任の範疇にあるものです。
だから、自分を癒やし、気持ちを整え、パートナーに対して「自分のベスト・今できること」を続けてみてください、とお願いしていますし、そのお手伝いは僕もさせてもらっています。
最後に
相手の受け容れる心の器って、自分の事情や痛みを超えて、人を理解し、受け容れ、与えることと、自分に向けられた人の愛に感謝し受け取ることの両輪によって作られるものです。
だから、自分や人の間違いを罰しても、傷つかないように一人の世界を作り上げても、なかなか次に進めないものかもしれません。
もし、あなたのパートナーがあなたの愛情を受け取らないなら、それだけの痛みがあるのかもしれません。
そして、あなたにも同じ痛みがないか、一度見つめてみてください。
そして、あなたはどんな自分でいたいのでしょうか。あなたがパートナーに伝えたい本当の気持ちは何でしょうか。
そんな自分に気づいて、自分を磨いてみたり、癒やしてみるのの一つの方法です。
また、なにより素晴らしい自分を感じることが、あなたにもパートナーさんにもとても意味のあることになると僕は思いますよ。
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