日常に使える心理学

言いたいことが言えない心理

言いたいことがあるんですが、言っても大丈夫ですか?というご質問は多いんです

「彼に言いたいことがあるんですけど、言っても大丈夫でしょうか?」

このご質問は意外と多いんですよね。

今、微妙な関係の彼、彼女に言いたいことがある。
相手に伝えたい気になることがある。
今の自分の気持ちを言いたい。

基本的に僕は「言いたいことがあるなら言っていいですよね」「もちろん言わないことがダメなわけでもないし、その自由もありますし」とお答えすることが多いでしょうか。

とはいえ、実際のご提案ってケースバイケースとで、社会性の求められる場面でなら、まぁ言いたいことを言い過ぎることに問題が出る場合もありますよね。

また。自分の感情にまかせて気持ちをぶちまけても、こちらの真意が伝わりにくくなるので自分にデメリットがある、ともいえます。

が、パートナーシップや親しい対人関係の中で「何も言えない」って結構切ないですよね。

僕のもとにお寄せいただくご相談の多くは、パートナーとの関係、近しい人との関係についてなので、そうなると「言いたいことを言っていいですよ」となります。

問題は「言いたいことをちゃんと相手に伝えることができるか」です。

相手が理解しない、という要素もあるにはありますが、自分の伝えたいことを「相手の心に届けることができるか」がものすごく大切だと僕は考えています。

 

言いたいことが言えない理由

言いたいことが言えない人の深層心理について見つめていくと、いくつかの共通した心理が見えてくることがありますよ。代表的なものをご紹介してみます。

自信がない・自分を良い存在だと感じていない

誰しも多かれ少なかれこう感じている部分があるんですけどね。いわゆる「罪悪感」「無価値感」という感情を何かしらの事情で強く感じていると、「罪深い(何の価値もない)私が相手に言いたいことを言うなんて・・・」と感じます。

だから、自分の思いがどれだけ素晴らしかったとしても、相手に伝えないのです。そもそも伝えること自体が悪い、迷惑だ、と感じているからですね。

このパターンは、毎日黙って頑張ってる方に多いものでもあります。もう毎日めっちゃ頑張っているのに「自分の気持ちを言うと相手に悪い」と感じている方が多いのなんの。

だから、相手が受け入れてくれる姿勢を見せないと自分の気持ちを言えないわけで、そういう意味で「人を選んで付き合っている」人も少なくないんですね。

だから、「私は心が狭いし、そんなにいい人じゃない」とおっしゃる方も多いんですが、僕が見るに「それって逆じゃないですか?」と思う方って少なくないんですよ。

この場合は、どうしてそんなに罪悪感(無価値感)が強まっているの?という部分を見つめて、こんがらがった感情をケアしたり、自分と向き合っていくことで抜け出せることがあります。

 

実は自分のミス、過失を隠していて相手を怖れている

これも罪悪感といえばそうなんですけど、自分が「オイタ」しちゃって、自分にも非があるよなーと感じると、途端に言いたいことが言えなくなる人もいます。

自分が悪いと思っているんだけど、その事実や気持ちと向き合えていないんですね。だから、バレたくない、相手に責められたくない(きっと責められる)と思う。

まるで、野球のボールで波平さんの盆栽を割ったカツオくん、のような感じです。

そもそも自分にできることは、怒られないことではなく、自分の感情や行動に責任を持つことだけですからね。

この場合、自分の感情や行動に責任を持とうとすることが抜け道になりますね。

 

実は嘘をついていると感じている

この嘘は相手を騙そうという意図がある嘘ではないことが多いですね。自分をよく見せたいがために、実際とは違うことを伝えている、と感じているケースです。いわば「背伸びして相手によく思われたいがため」についている嘘ですね。

時には、相手のために嘘をついたのだけど、私は正直じゃない、と自分を責めている人もいます。

嘘をついていると感じている自分は悪いやつ、ですから、悪いことをしている、という罪悪感から「言いたいことを言ってはいけない」と感じるというわけです。

この場合、どうしてその嘘が必要だったの?という部分を見つめていくことがポイントでしょうかね。嘘がいいことかどうかよりも、嘘をつこうとした事情を見つめることですね。すると、誠実に自分を表現できるようになり、その結果、言いたいことが言えるようになる感じです。

 

思い込みによるもの

人はいろんな思い込みを持っているものです。〇〇はすごいもの、△△は価値のあること、XXはダメなこと、しょぼいこと・・・のように。

そういった思い込み(観念)によって「私は言いたいことを言ってはいけないのでは?」と感じている人もいます。

典型的な事例で言えば、専業主婦の奥さんが働いていないということが理由で、夫に言いたいことが言えない、というケースです。

そもそも専業主婦である、夫が働いているということは、それぞれの選択であり、お互いに同意している夫婦の形であり、そもそもが「自分と相手の幸せのため」になされている選択のはずですよね。

しかし、「私、働くの嫌なんだよなー」と、労働に対して苦手意識を持っていた女性が専業主婦になったとしたら

「働くの嫌→夫は嫌なことをしてくれている→悪いな→なんだか相手の方が格上のような気がする→言いたいこと言っちゃいけないな」と感じることがあるわけですね。

その他にも、稼ぎが多い人がスゴい、人気がある人がすごい、物事上手な人がすごい、などなど、相手の凄さを使って「自分なんて・・・」と比較して責めるなんてパターンもありますけどね。

こうなると、言いたいことはいっちゃいけないと思いやすくなりますね。

ただ、そもそも働くのが嫌だから専業主婦になっている、と考えていることが自分への罰だと僕は思うのです。

が、〇〇が嫌だからという思いを強めると「自分は何かを嫌っている、嫌なことから逃げている」と感じるわけですから、どんどん自分のイメージが悪くなっちゃいます。

そうではなくて、私は自分の意志で専業主婦を選んだ、と思い、今の自分のベストを尽くして、家族やパートナーのために愛情を注げば、後ろめたさなど感じないわけです。

つまり、この場合は、自分の思い込みに気づくことや、自分が申し訳なさを使って先送りしていることに取り組むことがポイントですね。

いわば自分はなにかから逃げている・何もしていない、という罪悪感にやられちゃうと言いたいことが言えなくなる、ということですね。

 

自分の期待通りに物事を進めたい

これは恋愛のご相談でよく伺う話ですけど、「自分の期待通りに物事を進めたい」と感じている人ほど、言いたいことが言えなくなります。

「こんなこと言っても大丈夫でしょうか?相手が嫌な気持ちにならないでしょうか?」というご質問をくださる場合も多いかな。

これは、好かれたい、という期待と、反対の、嫌われるという失望、の現れです。

もちろんそこにある不安も理解できますし、そう感じることがどうのこうのといいたいわけじゃないです。その不安はできるだけ手放しておいたほうがいいでしょうしね。

ただ、この状態って、「好かれたいという期待」は「自分の外側」にあって、「嫌われるという不安」は「自分の中にある」ということを示しています。

これじゃ自分が嫌われる方向に進んじゃうって、なんとなくおわかりいただけますでしょうか。自分が自分で嫌われるという感覚を選んじゃっているわけですから、自分が好かれる理由は自分の中にないわけですよ。

だから、このブログでも何度も書いていますが、期待は失望の母と言えるのです。

そもそも期待とは、自分の未熟さや不安から生じるものなんです。自分にそれだけの力がない、自信がないと思うから、物事に期待するようになるんですね。

もちろんそういったお話をして下さる皆さんも日々頑張っておられますし、その頑張りは尊いものに違いないんです。それぐらい皆さん素晴らしいんです。

が、どこかで自分を信じきれていないと、自分の外側に期待しちゃうんですね。

最後の最後に残った「誰かなんとかしてよ」という被害者的スタンスが自分を苦しめているってわけです。だから、言いたいことが言えないんですね。

自分には愛される価値もあるし、自分は自分でいいんだと感じるための癒やしや視点が、この状況を変えてくれます。

だから、期待が強い方ほど、自分にフォーカスして、自分の目的のために専念したり、自分自身のイメージをより良い方向に進めることがポイントです。

 

その他にも様々な理由がありますが、よくあるケースはこのようなものといえますね。

 

言いたいことを言うときのポイント

では、実際に言いたいことを伝えるポイントなんですが、「私はこう思う」とちゃんと主語をつけて伝えることです。

うっかり行き過ぎて「自分や相手を責めないこと」「相手の意見や態度は間違っている!」と断定しないことでしょうね。

自分がこう思う、と伝えることと、相手の考えは間違っている、おかしい、と伝えることはそもそも異なる行為とですし、伝わるものが全く違います。

まぁ教育的な指導という意味合いでは、それ間違っているよ、と伝えることに意味も出てくると思うんですが、大人の関係性の中で自分の意見を否定されていい気分になる人は稀でしょう。

私の思いと相手の思いは対等。

こう感じられると頭ごなしに相手を否定することは少なくなるでしょう。もちろん自分の意見の価値も感じられるでしょう。

 

そもそも恋愛など、自分を愛してくれる人、そばにいる人の思いを否定したい人ってどれぐらいいるんでしょう?

「もう、彼は何も分かってない!」と怒りを感じている方もいらっしゃるでしょうが、分かって欲しいのはその怒りを生み出すほどに「私の真心が伝わっていない」という悲しみを感じているからではないでしょうか。

僕もカウンセリングの中で「もう一体どうしたら相手に伝わるんでしょうか」と涙される方のお話を何度も伺ってきました。それは本当に辛いことです。

しかし、自分の思いが相手への愛や思いやりならば、その価値はちゃんと抱きしめてあげてほしいと思うのです。あなたの思いにはそれだけの価値があるのです。

時にはそれなりの時間がかかる癒やしになるやもしれませんが、自分の気持ちの意味、価値、大きさを感じてみようと自分と向き合うことは、自分を表現し、大切な人を愛することにつながります。

そして、「私は自分の想いに従って、私なりに愛しているし、できることをしている」と思えた時、言いたいことはすんなりと言えるようになるものですよ。

そこで伝える気持ちは、相手への批判や、自分の悲しさ、苦しさ以上に、相手を大切に想う愛や真心になるはずです。

この愛や真心が相手の心に伝わることが何より大切なこと、と僕は思うのですね。

ABOUT ME
浅野 寿和
カウンセリングサービス所属心理カウンセラー。名古屋を中心に東京・大阪・福岡で〜旅人のように〜カウンセリング・セミナーを開催。心理学は現実で使えてなんぼ、がポリシー。
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