夫婦のための心理学

夫婦の危機が訪れる理由とその乗り越え方 〜デッドゾーンを超える〜

旦那を疑う女性

「夫婦の危機」に関するご相談をお受けすることがあります。

長年、人生を共にしてきたご夫婦からのご相談から、結婚数年で夫婦の危機が訪れるという場合もありますね。

実際、夫婦の危機は、誰にでも起こりうる普遍的な問題と言えるでしょう。

夫婦関係は、その始まりから終わりまで同じようなパートナーとのつながりを維持することができるとは限らないのです。

むしろ、お互いの愛や絆、関わり方を変えながら進んでいくもの、と言えるんですよね。

だから、「夫婦の危機」というものも、僕は一つのご夫婦が歩むプロセスとして捉えています。

だからこそ、その先に進むことも可能だ、と考えていますし、危機を乗り越えるサポートもさせていただいてきました。

ただ、実際に夫婦の危機に直面すると、多くの方がとても困惑することが多いようです。

そこで今回のコラムでは、「夫婦の危機が訪れる理由」を心の面から考えてみたいと思います。

かつ、そこを乗り越えていくための考え方もご紹介したいと思います。

よろしければどうぞ。

夫婦の危機は様々な形で訪れる

そもそも「夫婦の危機」は様々な形で訪れます。

時間経過とともにジワジワ訪れる場合もあれば、あるとき突然訪れることもあるわけです。

  • 今までは何の問題もなかったと思っていた関係に、急にコミットできなくなった。
  • 今まで経済的な問題や子育てなどの価値観の相違を抱えていたが、それに耐えられなくなった。
  • 夫や妻以外に魅力を感じる異性と出会ったことで、急にパートナーへの気持ちが冷めてしまった。
  • パートナーや家族を裏切るつもりなどなかったが、浮気(不倫)した(された)。
  • いつからか今の夫婦関係を維持して幸せになれるとは全く思えなくなった。
  • 今までパートナーの悩みも愚痴も不満も全部受け止め続けてきたけれど、もうムリだと思えてきた。

そんな気持ちを抱くようになると

「もうこの関係を続けていくことはできない」
「別れたほうが幸せなのだろう」
「何のために今まで夫婦を続けてきたのだろう」
「そもそも自分は夫(妻)を最初から愛していなかったのだ」

といった思いを抱くようになりやすくなる、といいますかね。

夫婦関係をどう継続するか?ではなく、継続しない理由を考え始めるようになることが多いようです。

それは、今、夫婦の危機を迎えている自分自身の気持ちが苦しく辛いものであればあるほど、そうなりやすい、と言えるんですよ。

夫婦の危機が訪れる理由

夫婦の危機を迎えた男女

さて、結婚当初は仲が良かった夫婦にも訪れる夫婦の危機。

なぜ訪れるのでしょうか。

夫婦の危機が引き起こされる理由は、夫婦の関係性が絆や愛、つながりではなく、義務や役割、もしくは癒着関係に変わってしまった結果だと考えることができます。

具体的には

  • 夫婦のコミュニケーションがなくなってしまった(価値観の相違が続いた)
  • 自分の価値観をパートナーに理解させたい気持ちが強くなりすぎた
  • お互いに父・母という役割意識を強くしていき、男と女という意識が薄れた
  • 夫婦の形は時間経過とともに変化するが、それを恐れて昔のままの価値観を維持していた
  • 夫や妻のために自己犠牲を続けて限界が来てしまった
  • 「もう何もしたくない」「何をやってもこの状況は変わらない」といった諦めを感じ続けてきた

このようなものが考えられます。

そんな状況の中にいると夫婦の危機が訪れやすくなると言えるのです。

また、夫婦の危機が引き起こされる場合

夫婦が適切な距離感の中で、絆や愛、つながりを感じられておらず

分離してしまっているケースと、癒着関係のように近くなりすぎてしまうパターンに分けて考えることができます。

夫婦が分離するパターンの場合

これは自立が強すぎる場合に起きるパターンですね。

例えば

「パートナーに対して何の感情も抱かなくなる」
「パートナーとの価値観の相違が鮮明になってわかり合うことができないと感じる」

といったケース。

これはパートナーとの距離感を取りすぎて分離していて、お互いの気持ちへの興味自体を失いかけているケースですね。

夫婦が癒着するパターンの場合

これは夫婦の中に適切な絆や愛情関係が成立せず、相手と癒着してしまう場合です。

例えば

「パートナーに強い怒りや憤りを感じる」「パートナーを手放したくない」
「パートナーに変わってほしいと思う(自分の価値観は変えたくない)」
「今のこの関係が悪化したのは全て自分のせいだと感じる」

といったケースがそれに当たります。

これはパートナーとの距離感が癒着している感じになり、お互いの気持ちへの理解が曖昧になりすぎているケースですね。

夫婦の危機は心理的なデッドゾーンを示している

夫婦の危機は心理的な「デッドゾーン」を示している、と言われます。

デッドゾーンとは、心の成長プロセスの一つ。

デッドゾーンでは、燃え尽き感、義務と役割、倦怠感、失敗感、自分は偽物のような感じ、死んだような感覚などの嫌な感覚と、ふんだりけったりのしんどさを感じる、と言われています。

※デッドゾーン、成長プロセスについては次の記事でも解説しています。

心理学講座のシンボル
自立と依存 〜心の成長プロセスの解説〜自立と依存 〜心の成長プロセス〜 「自立と依存」とは、「今の自分の心の状態を示す言葉」で「自分の成長プロセスと課題を示す指標」です...

多く、夫婦関係のデッドゾーンにいる方々は

お互いが「自分が我慢すればいい」「自分が傷つけばいい」と考えていることがとても多いのです。

だから、燃え尽きていたり、ふんだりけったり感を感じることにもなるんですよねぇ。

これ、心理的に見れば「自己犠牲」とも言えそうです。

自分が傷つけばいいんだろう、我慢すればいいんだろう、努力すればいいんだろう、と考えてしまうという意味でね。

自己犠牲が強いタイプの恋愛パターンとその卒業方法を解説!今日のコラムは「自己犠牲が強いタイプの恋愛パターン」について。 例えば、恋愛中に「パートナーの苦手なこと・困りごとがあるならサポートし...

その前提には

「こちらから夫婦関係を改善するためのアクションを起こしても良いことが起きるわけがないという諦めがある」

とも言えます。

ここでのポイントは、このような気持ちを、自分だけでなく、相手も同じように感じている、という部分です。

この状態を客観的に見つめると

「お互いがお互いなりに二人の関係のために頑張ってきた」

ということを示すのです。

デッドゾーンにいると自分の愛情もパートナーの愛情も受け取れなくなる

しかし、強い諦めを感じるデッドゾーンの中では、なかなか「自分なりの(相手なりの)努力、献身、愛情」を認めて受け取ることができません。

なぜなら

「そんなものを受け取ったら、また以前のように頑張らなきゃいけない、愛さなきゃいけない」

と思いこんでいる事が多いからです。

実はこれこそが「一人で頑張る」「何事も自分次第だ」という自立的な生き方を手放させないようにする「私達のエゴの戦略」でもあるのですが、そこにもなかなか気付けないんですよ。

それぐらい心が燃え尽きている、愛する気持ちが湧き出してこないのがこのデッドゾーンの特徴です。

デッドゾーンは生まれ変わりのステージとも言われる

ただ、デッドゾーンは生まれ変わりのステージとも言われています。

夫婦が夫婦寄り添って生きていたのではなく

実は今までそれぞれ一人で頑張る、一人で問題を抱える、一人で戦うというやり方を使い続けてきた、ということに気づくこと。

その生き方に終止符を打ち、誰かと共に生きるという相互依存を目指してみること。

それによって、夫婦の危機を乗り越えることもまた可能になっていきます。

ただし、夫婦の危機は乗り越えるべきものだとは言えない、と僕は考えています。

人生、どの選択がどんな幸せとつながっているのか、分からないものですからね。

だから、僕は別れることも選択肢としてあり得ると考えていますし、悩ましいことには違いないですが、別れることが常にネガティヴだとは思いません。

ただ、ご相談者様の中には、燃え尽きを感じながらも「パートナーや家族を傷つけることは望まない」といったお気持ちを抱かれている方も少なくないのです。

もしそうであるならば、夫婦の危機を乗り越えていく意味もあるのかもしれませんよね。

訪れた夫婦の危機の乗り越え方を考える

ここからは、二人の間に訪れた「夫婦の危機」を乗り越えて行く方法について考えていきたいと思います。

夫婦の危機、特に夫婦に訪れたデッドゾーンを抜ける方法はいくつか存在します。

この状況を抜けていくために「意識しておきたいこと」があると僕は考えますので、それをご紹介していきます。

お互いに大変な心の重荷を抱えていると理解する

1つ目は「お互いに大変な心の重荷を抱えている状態である」と理解してみてほしいのです。

私も、そしてパートナーも、傷つき、諦めることによって、なんとか関係を維持してきた、辛い時間をやりすごそうとしてきた。

そんなふうに今までのプロセスを見つめてみることを僕はオススメしています。

そして、自分が抱えている心の重荷を「大したことがない」と扱わず、きちんとケアする意識を持っていただきたいのです。

きちんと自分の心の手当をすること。

例えば、辛い気持ち、うんざりする気持ちを一人で抱えず信頼できる人に話したり、カウンセリングセッションを受けながら、自分の気持ちを整理したり。

同時に、自分の心の手当と同じぐらい大切なことがあるのです。

それが

「自分だけが心の重荷を抱えてきたと誤解しないこと」です。

この誤解を持つと、自分自身が深い加害者意識(表面的には被害者意識ですが)を抱えることになり、自分を許せなくなりやすいので、ホント注意したいところです。

抱えてきた心の重荷の中に自分なりの愛があることを理解する

また、抱えてきた心の重荷の中に「自分なりの愛」があることを理解してみていただきたいですね。

愛する人のために自分が傷つくなら、それは愛ではないかもしれません。

しかし、愛する人のために傷ついてもいいと思えるぐらいの思いがあるなら、そこには純粋な思いがあったとも言えないでしょうか。

この視点を持って、重荷を抱えてもう頑張れないと感じる自分自身を責める視点から、自分を認める視点へとシフトしていく方向を目指していただくといいと思います。

「夫婦関係をなんとかしたい」と願う気持ちを大切にする

また、今のパートナーとの関係を「なんとかしたいと願う気持ち」を大切にしてみてください。

夫婦の危機、デッドゾーンが訪れると、「何をやっても無駄」のように感じやすくなるんです。

いわば諦めの気持ちがとても強くなる傾向があるんですね。

だから、諦めを感じながらでもいいので

「この夫婦関係をなんとかしたいと願う気持ち」

ここを大切にしてみてただきたいのです。

「そんなこと思ったってうまくいかないよ」と何度も思うことでしょう。

「もうこの関係に意味はないし、続けていくことは不可能だ」と感じることもあるでしょう。

それこそがデッドゾーンの中で起きることなんです。

癒着を解消する視点を持つ

このコラムにも書いてあるのですが、デッドゾーンの中ではあまりに苦しすぎて、パートナーやその他のなにかに癒着する傾向を見せることがあります。

この癒着はパートナーとの信頼や愛、つながりの代わりに生じるものなのですが、癒着が起きると

  • パートナーのことを背負いすぎてしまう
  • パートナーからの信頼や愛情を一切感じられなくなる
  • 自分自身がパートナーとどうしていきたいか分からなくなる
  • 自己犠牲的な感覚でパートナーと接してしまう

このようなことが起きていく事が少なくないのです。

なので、もし癒着が生じているなら、その癒着に関して丁寧に癒していくことがおすすめになるんですよね。

その詳しい内容は以下のコラムにありますので、よろしければご覧ください。

責任感・燃え尽き感から生じる癒着 〜苦しくて自分を保てないときの対処法〜さて、今日のコラムも癒着の心理に関するお話です。 今日は「責任感から生じる癒着」というテーマのコラムです。 癒着は相手と心がくっつい...

パートナーとの優しくシンプルなコミュニケーションを取り戻す

パートナーとの関係においては、少しずつできることからで良いので

「優しくシンプルなコミュニケーションを取り戻す」といいですね。

例えば

挨拶すらしなくなった関係なら、まず自分から挨拶だけはしてみる。

お互いの仕事や子供のことで話し合えることがあるなら、その話をしてみる。

デッドゾーンの中では「パートナーに対して何もしないという状態」が続きやすいのです。

と同時に、デッドゾーンは「一人では抜け出すことができない」という性質があります。

つまり、夫婦のデッドゾーンが生じる理由は

自分の価値観、愛し方だけで今の関係を成立させようとしている部分にある、とも言えます。

だからこそ、優しくシンプルなコミュニケーションからで良いので、少しづつでも話し合う時間が作れるならば、作ったほうがお互いの心が楽になりやすい、と言えますね。

最後に

実は、夫婦の危機の乗り越え方に「これが正解」と断定できるなにかはありません。

それぞれのご夫婦の中にあるご事情というものがありますから、僕も一概にこれが正解、とはお伝えできないのです。

しかし、この先に進むためにできることはあります。

なかなか困難な道になることもありますが、諦めずに向き合っていきたいですね。

僕もできる限りお力になれれば、といつも願っているところです。

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