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彼を頼れない女性と信頼して欲しい彼の話
その彼女は生来のしっかり者で努力家。
人に心配されるぐらいなら自分のことは自ら話さない、そんな人でした。
彼女も自分の性格をよく分かっていたようで、自分でも「可愛くないかも」「素直じゃないところがある」思っていたようです。
しかし彼女はいつも平気なふりをすることが正しいと思っていました。
それは「人に心配をかけないように」という目的のためにです。
そんな彼女はいつしか自然と
「自分の気持ちを隠すこと」に慣れてしまっていたようなんです。
*
ある日、彼女のことが好きで、近づいてきた男性がいました。
彼女は彼とお付き合いすることになり、幸せな日々を送っていた矢先。
彼から「俺と一緒にいて楽しいの?」と言われてしまったのです。
「〇〇は疲れているのに平気な振りをするでしょ。
あんまり言いたくないけど、俺、そういうの好きじゃないっていうか。
信頼されていない気がする。
俺に足りないところがあったり、やってほしいことがあるなら言ってほしいと思う。
一緒にいて気を使う関係にはしたくないんだよ。」
彼女にとって彼の気持ちはとても嬉しいものでした。
ただ、彼の言葉を理解はできても、一体どうしたら彼の気持ちに応えられるのかが分からなかったのです。
なぜなら彼女の深層心理では
「好きな人、大切な人に迷惑をかける事だけはダメ。じゃないと愛されない」
と強く思っていたからなのです。
彼を頼れない彼女の中にある「迷惑をかけると愛されない」の正体
さて、彼を頼れない彼女の中にある気持ち
「迷惑をかける事だけはダメ。じゃないと愛されない」。
実はこれ、彼女にとっての「愛される秘訣」ではないのです。
むしろ逆で「私が傷つかないための秘訣」だったりするのですね。
私が傷つかない秘訣が、彼と幸せになる秘訣と一致するわけではないので、このあたりが彼女の問題を作っているようだ、と見ることができます。
彼女のように「大切な人にすら頼れない」というパターンは
私達の心理学でいう「自立~一人で頑張る生き方~」を採用しているからだと考えられます。
この「自立」は、一人で頑張るという生き方以外にも
「いかに傷つかないか」というスタンスをとっているとも考えることができるのです。
つまり、彼女は「人に迷惑をかけることで自分自身が傷ついてしまう人」だったのです。
人を頼ることで愛されなくなってしまうという幻想
とかくいい人、真面目な人に多いパターンですが
僕たちは
「人に頼ることは迷惑なことだから、愛されなくなってしまう(嫌われてしまう)」
という幻想を抱くことがあります。
要は
「いい子でいれば、いい人でいれば、自分でキチンを何もかもできるようになることで、いつか愛されるし、認められるだろう」
という依存のスタンスを取ることがあるわけです。
よって、人を頼り、相手に負担をかけたり迷惑をかける行為は、愛されなくなるリスクでしかない、と捉えるのです。
が、実際、人を頼ることが迷惑なことなのか、というと、それこそまさにケースバイケースです。
確かに、相手が「迷惑だ」「無理だ」と言っているのに、更に頼る、求めるとしたら、それはマズい行動となるわけです。
が、信頼関係の中でお互いに支え合うなら、問題とは真逆の価値ある行為となるんですよね。
彼を頼ることで自分自身が傷つく理由は「自尊感情」にある
では、どうして「彼(人)を頼ることでなぜ自分自身が傷ついてしまう」のでしょうね?
という話が残っているのですが
これは一つの「期待の心理」だと考えていいと僕は思います。
つまり、ここでの「傷つくこと」とは、いわば「失望」に近い、と僕は考えています。
※期待の心理についての解説は次の記事にありますので、よろしければご覧くださいね。
ただ、この期待と失望を理解していくためには、「自尊感情」という言葉についてもう少し理解する必要があるのですね。
なので、そのあたりの解説を進めます。
基本的自尊感情について
僕たちは、例えば、パートナー、仲間、親、家族などに
自分自身の体験や感情を受け止めてもらう経験によって(これを「共有体験」と心理学ではいいます)
僕たちの心は安心する側面があるのです。
要は、自分自身が何かにチャレンジして成功しても、失敗しても
その体験を誰かと共有し、そのまま受け止めてもらう経験などを通じて
自分自身がたとえ失敗しても
「それでええやん」「失敗にも意味があったし良い経験だった」
と自分で思えるようになる、といった感じです。
それはまるで「自分は自分であっていい」という感覚なのです。
この感覚を心理学では「基本的自尊感情」と呼びます。
(ちなみに、自分自身がなにかに成功しても失敗しても、それが良い経験だったと自己評価できる時に感じる気持ちを「自己肯定感」といいます。)
社会的自尊感情について
また、自尊感情にはもう一つの側面があり、「社会的自尊感情」と呼ばれるものがあります。
社会的自尊感情は、他者との比較や、目標の達成、何かを成し遂げたことによって得られる評価によって積み上げられる自尊感情のことです。
自分と他者を比べたり、他者から承認されたり否定されることで変化する側面がある感情でもあります。
例えば、子供の頃からしっかり者であったり、いい子である人ほど
人に自分自身の体験、気持ち、考え、感じたことを分かち合う共有体験を得る機会が少ない、という場合があります。
このような人の中には
いい子でいること
何事も頑張ること
人から認められること
他者との比較の中で勝つこと
などを通じて、努力や人からの評価によって自尊感情を獲得している場合もあるわけですね。
要は、頑張ることで自分を支えている、って感じです。
頑張ることで自分を支えている人ほど、彼を頼ることでの失望を怖れる
そんな「頑張ることで自分を支え続けてきた人」にとって
頑張らない選択、つまり今回のケースで言えば「人や彼を頼る」という行為は、ものすごく不安を煽る行為になるのはご理解いただけるのではないでしょうか。
いわば、「自分を支えてきた何かがなくなる怖れ」を無意識的に感じやすいってことです。
と同時に、意識では
「私のすべてを支えてくれる人がいればいいのに」などと期待をするわけです。
が、実際は「人を頼る」ということで、自分を支えるものがなくなる(無価値な私になっちゃう・愛されなくなっちゃう、嫌われちゃう)と感じることにもなるのです。
だから、愛されなくなるという「失望」を恐れて、「たとえ期待していても人に頼らない」と考える人が出てきます。
もっと言えば「人を頼りたいと思うから失望するんだ」と、人を頼らない生き方を選ぶ人も出てくるんですね。
彼を頼れない女性ほど「自分は自分でいい」と感じることが良い感じ
ということで
彼を頼れない女性ほど「自分は自分でいい」と感じることが良い方向に向かう一つの目安になるかな、と僕は考えます。
自己肯定感、もそうですけど、僕の考えでは
基本的自尊感情に着目する、という感じです。
いわば、基本的自尊感情と比較して社会的自尊感情が肥大化したままですと
実はすごく傷つきやすかったり、一つの失敗・失恋でめちゃくちゃ凹むようになる
そんな努力家のみなさんって存在すると僕は考えています。
だから、なかなか人を頼れなかったり、愛する人の気持ちを受け取れなかったりすることも少なくないと僕は思うのです。
で、その弱さのリカバーを努力で行ったとしても、凹みやすさや不安が解消するかというと、一時的には解消しても
受け取りベタ、愛されベタのまま
なんてことも実際にある話なんですよね。
だから、どのように自分を支えるかのバランスがとても重要になってくる、といいますか。
このバランスが取れないと、彼から愛されていても受け取れなくなっちゃう場合も出てくる、といいますか。
とはいえ、厳密にバランスを取るなんてことは難しいので、なんとなく
「私は私でいいやん」「何があっても私は私でいい」
と思える方向に進むことがおすすめではあったりします。
これは「自分に何ができるか」という自己肯定で進める部分とは少し違うんですよね。
逆に自分に期待したり、価値を過剰に褒めすぎると、それがハードルになって更に受け取れないなんてことも起きる場合もあるのです。
彼を頼れない女性にとって共有体験は大切
最後になりますが
いわば自立が強くて彼を頼れないという女性のみなさんにとって
共有体験、体験や気持ちをわかり合う経験は重要な要素になると僕は思いますよ。
様々な気持ちや体験を信頼できる人と分かち合ったり(共有体験)
時にはカウンセラーに話す体験を通じて
なんとなく「自分は自分でいいやん」と感じやすくなる可能性がある、という部分。
なにより、今の不安な気持ちを誰かに話せることの安心感。
そのあたりがポイントになるんじゃないかなーと思うんですね。
そんな体験を通じて
彼にいろいろな自分の体験や気持ちを話せるようになっていくことも重要といいますかね。
普段自立的に生きている方ほど気づきにくいことかもしれませんが
「自分の体験や考え、気持ちを誰かと分かちあう」
という行為、体験自体に、自分をありのまま認めるきっかけがある、と僕は考えています。
もちろん人によってその効果は異なると思いますが、ゆっくりとでも「自分は自分でいい」と思える方向を模索してみると
「マジか!彼って私をこんなにも受け入れてくれているんだ!」
と実感できる日がやってくるかもしれませんよ。
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