「仕事での頼まれごとや相手からの誘いを断ることが苦手。
いつも無理をして相手に合わせて疲れてしまいます・・・。」
そんなお声を伺うことがありますね。
いわば「断ることが苦手」というお話です。
断ることに関して何ら躊躇がない人もいますけど、苦手な人にとっては「私に頼むなよ」「私を誘うなよ」「もう関わらないで〜」みたいな気持ちになる瞬間かもしれません。
頭では「Noと言えばいい」と理解しているけれど、いざその場になるとそれが言えない・・・。
実際に断るとなると、その言い訳はたくさん考えることにもなる・・・。
これ、なかなかしんどい話ですよね。
そこで今日は「断ることが苦手な人の心理」に付いて解説していきたいと思います。
よろしければどうぞ。
断ることが苦手になる理由
人が人からの依頼を断ることが苦手な場合には、いくつかの心理的な要因が考えられますね。
その代表的な例をいくつかご紹介します。
相手の期待(気持ち)を傷つけたくないという気持ちが強い
断ることで、相手をがっかりさせたり、不快な気持ちにさせたりするのではないかという不安を感じると、断ることが苦手に感じることがあります。
相手がどんな気持ちであなたにお願いしているのかや、相手が断ることで傷つくかどうかの判断の前に「傷つけたらどうしよう」と感じてしまうのです。
これは「断る」→「傷つける」→「罪悪感を感じる(自分も傷つく)」ということなんです。
断ると自分が悪いと感じるので、自分が悪いと思いたくないから断れなくなる、と言いますかね。
特に、相手が親しい友人や家族、職場の同僚など、自分にとって大切な人である場合には、その気持ちが強くなる傾向がありますね。


自分の能力に対する不安
依頼されたことをこなす自信がない場合、「自分には無理かもしれない」という不安を感じることがありますね。
特に、過去に失敗した経験や、周りの人から能力を否定された経験などがあると、その不安は強くなる可能性があります。
また、友達の誘いを断ったら二度と誘ってもらえないかも?と思う気持ちも、これにあたります。
要は自分の価値や魅力に対する不安があるので、断ることができないのです。
責任感が強い性格
責任感が強い人は、頼まれたことを途中で投げ出すことや、期待に応えられないことに対して強い罪悪感を抱きやすい傾向があります。
そのため、無理なことも引き受けてしまい、後で苦労してしまうことがあります。
もちろん、責任感自体は悪いものではなく、信頼を得るために必要なものなのです。
ただ「責任感じで自分を縛り付ける」となると、問題が生じてしまうのです。
過去の対人関係の影響
過去に人から依頼されたことを断った際に、相手から強く責められたり、嫌な思いをさせられたりした経験があると、その影響で断れなくなることもあります。
これは体験的に「断ると相手から恨まれたり、いじめられたりとひどい目に合う」と学習していると言えますね。
そのため、無意識のうちに人からの依頼を断ることに抵抗を感じてしまうことがあります。
コミュニケーション能力によるもの
これは「うまく断るためのコミュニケーション方法を知らない」という場合です。
とかく断りをいれるときにたくさん言い訳を考える人もいると思うんです。
例えば「急に家族が病気になって」とか「至急の仕事が入った」と言えば相手が納得してくれるのではないか、みたいにね。
ただ、上手な断り方への理解が不足している場合、どのように断れば相手を傷つけずに済むのかが分からず、どんな言い訳を考えても不安を感じることがあります。
それぐらい断ることに対して罪悪感を感じている様子が見えてきそうですね。
もしくは、いつも断ると起こり始める相手の問題、かもしれませんけれども。
相手に嫌われたくない
人から嫌われたくないという気持ちが強いと、相手からの依頼を断ることで、相手に嫌われてしまうのではないかという不安を感じることがあります。
この場合、自分自身が「私は嫌われる存在なんだ」と強く思い込んでいるケースが多いですね。
確かに断りをいれることで相手に嫌われることもあるのですが(^^;、自分自身を肯定的に捉えることができているならば、そのダメージもそこまで深くなりません。
が、そもそも自分嫌いだと、「断りを入れて嫌われる」ということに耐えられないと感じてしまうこともあるんですよね。
この場合は、丁寧に自分自身を見つめ直したいところかもしれません。
依存心が強い(心理的な癒着傾向がある)
ネガティブな意味での依存心が強い人は、常に誰かに頼っていたい、誰かに必要とされたいという気持ちがあるので、人の依頼を断ることが難しくなります。
人からの依頼を断ることで、自分が誰からも必要とされなくなるのではないかという不安を感じるのです。
この前提には心理的な癒着が存在することもしばしばです。
癒着は相手と自分の感情の境界線が明確になっていない状態なので、「こちらが断りをいれることで相手が嫌な気持ちになる」という心の動きをまるで自分のことのように感じやすくなります。
つまり、癒着があると「私のわがままで断りを入れたから相手がすごく嫌な気持ちになった」みたいに感じやすくなる、というわけです。
なので、どうしても相手に好かれたいとか、嫌われたくない、離れたくないと思えば、断ることができなくなってしまうわけですね。
環境的な要因によるもの
育った環境、居住地、地域、職場などの文化的な背景も、人が依頼を断ることに影響を与える可能性がありますね。
とかく日本の社会では、「相手の気持ちを察して、暗黙のうちに断ることが美徳」なんて風潮があります。
要は、あからさまにNOを言うことに抵抗感を持つ文化、といいますかね。
それは品がないとか、相手に対して失礼、と感じることがあるといいますかね。
断ることが苦手な人の深層心理
多く、断ることが苦手な人の深層心理には罪悪感の影響があります。
罪悪感とは「自分が悪い」「自分は愛されてはいけない・毒だ」という感覚をもたらすもの。
断ることで、自分が毒々しい存在だと感じていることが少なくないんです。
ただ、この毒々しさを明確に感じている人は少ないかもしれません。
この手の罪悪感って、深層心理下に抑圧されている場合が少なくないのでね。
ただ、なんとなく断ると気分が悪くなる、怖くなる、苦しくなる、という感覚となっていることが少なくないものでしょう。
すると、このような嫌な感覚を感じたくがないので、「嫌な感覚を感じないような行動が増える」というわけです。
それが「断らない」という行動。
つまり、「断りたいけど断れない」という状態は、「嫌な感覚(心理的には嫌悪刺激といいます)を回避する行動である」と言えるんですね。
これは一つの補償行為(埋め合わせの行動)と見ることもできます。

つまり、断ることが苦手な人は、断っても嫌な気分を感じ、断らなくても嫌な気分を感じる、という状態に陥っていることが少なくないのです。
ねぇ、想像するだけでめっちゃしんどいですよねぇ。
だから、相手にこちらの事情を理解してほしい、と願ってしまうものなのかもしれません。
ただ、そもそもこちらの事情を理解してくれる人ならば、断ったって理解を示してくれるものだと思いません?
つまり
「こちらが断ると相手がぶんむくれる」
普段からそんな人ばかり意識していたり、そんな人との関わりの中で「断るとろくなことがない」と学んでしまったのかもしれませんね。
断ることが苦手な自分を変える方法
人からの依頼を断ることが苦手な人が、その苦手意識を克服するためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。
では、具体的な方法と、その根拠となる心理学的な考え方を併せて解説します。
断ることに罪悪感を感じる原因を明確にする
まずは、なぜ自分が依頼を断ることに抵抗を感じるのか、その原因を具体的に考えてみましょう。
ただ漠然と苦手だと思うだけでは、なかなか状況が改善しないんですよね。
例えば、「相手をがっかりさせたくない」「自分の能力に自信がない」「責任感が強すぎる」など、人によって理由は様々でしょうから、そのあたりを明確にしてみてください。
断り方を知る
断り方がわからないという人は、信頼できる人に「こんなときどう断る?」みたいに聞いてみてもいいかもしれません。
ちなみに、断るというコミュニケーションのコツは、できるだけ早い段階で軽いタッチでNoと伝えることなのです。
ちょっと勇気がいりますけどね。
あとは、言い方、伝え方でしょうかね〜。
声のトーンや表情、言葉遣いなど、相手に与える印象も意識しながら伝えること。
とかく日本の場合は「こちらが断ることに申し訳無さを感じていますよ」と示すと、その言動が相手の価値観とある程度一致して、相手も納得してくれることも増えるといいますか。
この「相手の価値観とこちらの言動がある程度一致していている」という部分が、伝えやすさになるのでね。
こちらの意見を押し通すのが苦手な人ほど、相手を理解することも有効な手段かもしれませんね。
軽い依頼を重ねていく
断りって考え方によっては相手への依頼だ、とも言えるんですよ。
「自分には無理よ、お願いね」って意味合いで。
であるならば、自分が困ったときに誰かに助けを求めたり、仕事などであれば相手に大きな負荷がかからない程度の軽い依頼をする、なんてことを積み重ねていくことで、上手に断ることができる場合もありますよ。
受け入れられる依頼は快く受け入れる
こちらも断る理由がない依頼は快く受け入れるようにしましょう。
こうすることで、あなたが困ったときに助けてくれる人が現れやすくなります。
例えば職場などでは、いくら断ることが苦手であっても、それが嫌すぎて誰の依頼も引き受けない人になってしまうと、誰も助けてくれなくなってしまうことも考えられますからね。
依頼することも断ることも自由だと認識する
そもそも人に依頼することが自由ならば、断ることも自由なのです。
大切なことはお互いがお互いの事情を慮ること。
それが大人ってものじゃないでしょうか?
そもそも断りを入れても関係が崩れない関係ってお互いが大人なんですよ。
ここでの大人とは「自分の事情を押し殺すわけじゃないけれど、相手の事情も推し量って受け入れることができる」という意味だと思ってください。
つまり、自分自身が大人であればあるほど、断りやすくなるんです。
自分が大人であり、相手の事情を推し量るようにして接していれば、投影の法則や、学習の効果で、「多くの人は自分の事情を無下にはしないし、察してくれるものだ」と思いやすくなります。
その結果、自分から対人関係を尊重するようになるので、断りやすくなるものですよ。
まぁ、それでも自分の要求を押し付けてくる人もいますけど、その場合は適度な距離感を取ったり、できるだけ早い段階で明確にNoを伝えるようにするといいですね。
加害者意識を苦手にしすぎていないかチェックして自分を見つめる
「断ることができない人」は「罪の意識」を刺激されて傷つくことがとても嫌だと感じている人も多そう。
要は「断ることで自分が加害者になる」ということが苦手すぎて、自分を責めるのです。
結果、「私がダメなのだ」と感じる、と言いますか。
ならば、あなたはいつから「自分が加害者になること」にそれほど大きな嫌悪感を感じるようになったのか?と考えてみるといいかもしれません。
もちろん法を犯すレベルの加害は明らかに問題ですし、社会的な倫理観を逸脱するような行為も問題だと僕は思いますよ。
ただ、いいか悪いかは別にして、僕たちは人に迷惑や嫌な気持ちを与えることってありますよね?
しかし、断ることが苦手な人はどこか完璧主義的に「一切相手を傷つけたくない」と思い込んでいる場合も少なくないんです。
加害者意識を感じたくないからね。
ただ、それは「自分が悪い立場(加害者的立場)に立ったときに、誰も味方がいなくなる」みたいな体験をしたり、対人関係のイメージを持っている人ほど、加害を恐れすぎるものなのです。
家族の中で、友達の中で、社会の中で、そんな経験をすると、極端に加害者になることを恐れるものなのですよ。
そんな場合は、なぜここまで加害者意識を恐れるのか(つまり被害者意識ばかり選ぶのか)を考えてみて、そこを見つめ直すことも有効な手段なんですね。
自分自身の感情のケアを行う
実際のカウンセリングで僕自身が感じることは
「断りが苦手な人ほど、自分自身の感情だけでなく、他人の感情まで引き受けすぎている」
なんて状態であることが少なくないんです。
これは人それぞれで違うことなのですが、性格的に優しい人、生真面目な人、曲がったことが嫌いな人ほど、他人の感情の影響を無意識的に引き受けて溜め込んでしまっていることも少なくないんです。
すると、心の余裕がなくなって、苦手なことに取り組む余裕がなくなり、何でもかんでも引き受けて
「自分が悪いという結論を出せば場がまとまるだろう」
なんて考えてしまう人も出てきます。
このような場合は、自分自身の心の領域のケアが求められることが多いんです。
知らず知らずのうちに溜め込んでしまっている感情的な影響をクリアにすることで、実は自分を大切にする意識を取り戻すことができるのです。
ここでの自分らしい自分、とは、実は断ることができる自分。
そもそも断りが苦手な人って、自分らしい自分ではないんですよ。
どこか自己犠牲的な自分を続けているだけなんです。
これは言葉にしても分かりづらいことかもしれませんが、実際に感情のケアを行うことで、自分らしさを取り戻し、きちんと断れるようになった人を僕は知っています。
なので、自分一人ではどうにもならんなーと思われたら、カウンセリングを受けて頂く方法もありますよ、とお知らせだけしておきますね。
最後に
いかがでしたでしょうか?
人はそれぞれ異なる価値観や事情を抱えています。人からの依頼を断ることは、決して悪いことではありません。
自分自身の心と体を大切にすること、そして本当に大切なものを見失わないために、時には勇気を持って「NO」と言うことも必要なのです。
このコラムを読んだあなたが、少しでも気持ちが楽になり、自分らしい選択ができるようになることを願っています。
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