夫婦のための心理学

「頑張りすぎ」が夫婦関係を壊す?努力が空回りする理由と抜け出すヒント

何もしてあげられなかったと後悔する男女

「夫婦関係が努力しても悪化する…」

そんなお声を伺うことがあります。

真剣にパートナーと向き合おうとすればするほど、まるで空回りしてしまうように、努力が報われず苦しい思いをしている方のお話です。

あなたもそんな経験をされたことがありますでしょうか?

特に恋愛関係や夫婦関係において、一生懸命「頑張っている」のに、なぜか関係がうまくいかない。最悪の場合、別れという結末を迎えてしまうことにもなりかねないんですね。

いわゆる、頑張って頑張って、それでもダメで、もう離れるしか無くなってしまう関係、といいますか。

しかし、なぜ頑張っているのに夫婦関係がうまくいかなくなるのでしょうか?

今日は、そんな「頑張りすぎと夫婦関係(恋愛)」の落とし穴について、心理学的な視点から深掘りしていきたいと思います。

努力は美徳?頑張りすぎが関係を悪化させる現実もある?

喧嘩する男女

相手を想う気持ちから生まれる努力は、関係を深める上で大切な要素です。

記念日を祝ったり、相手の好きな料理を作ったり、困っている時に手を差し伸べたり。

これらの行動は、愛情を伝える大切な手段となります。

しかし、その努力が過度になると、相手にプレッシャーを与えてしまったり、あなた自身が疲弊してしまう原因になることも。

良かれと思ってしたことが、なぜか相手には重荷に感じられたり、感謝されないと感じてしまう。

そんな経験はありませんか?

「自己肯定感の低さ」だけじゃない?頑張りすぎる裏に潜む心理

頑張りすぎる理由として、よく語られるのは「自己肯定感の低さ」です。

「愛されるためには、これくらいしなければ」という思い込みから、過剰な努力をしてしまうというものです。

確かに、自己肯定感の低さは一因として考えられます。

しかし、それだけが全てではありません。実は、もっと別の心理が作用していることも多いのです。

頑張り続けているときほど、見えなくなる「愛されている」という事実

夫を疑う目でみる女性

私が考えるにもう一つの大きな理由は

「頑張り続けているときほど、相手に愛されていることに気付けない」

という心のメカニズムです。

想像してみてください。

あなたは、相手を喜ばせようと、常に何かをしていないと不安でいっぱい。相手の気持ちを深く知ろうとしすぎて、些細な言動を深読みしたり、常に「何か」を提供しようと躍起になっている。

まるで、必死にゴールを目指して走っているマラソンランナーが、沿道からの温かい声援や応援の旗に気づけないように、あなたは目の前の「頑張る」という行為に意識が集中しすぎて、周りの愛情サインを見落としてしまっているのです。

実は、頑張りすぎる人は、「きっと相手はこれで喜んでくれるはずだ」と無意識に思い込んでいることが多いのです。

もちろんそう思いたいお気持ちも個人的にはよく分かる気がします。

ただ、こうも考えられないでしょうか?

「なぜ私たちは「頑張る」ことに疑問を持たないのか」と。

これも一つの思い込みなのではないでしょうか。

それゆえに、「頑張りすぎてしまうこと」で愛情を見えなくする、という事実に気づけなくなってしまうようなのです。

そうなってしまう代表的な要因をいくつかご紹介します。

認知バイアスによる情報の歪み

心理学では「認知バイアス」と呼ばれる思考の偏りが存在します。

頑張りすぎている人は、「自分は愛されていないかもしれない」という不安から、相手の行動を否定的に解釈したり、愛情表現を過小評価したりする傾向があります(確証バイアス)。

行為者と観察者のバイアス

自分が「頑張っている」という状況に意識が向きすぎるあまり、相手の感情や状況への配慮が不足してしまうことがあります。

これを「行為者ー観察者バイアス」と呼ぶのです。

相手からすれば、すでに十分な愛情を示しているつもりでも、「自分の頑張り」ばかりが目についてしまうのです。

「〜してあげている」という意識の落とし穴

過度な努力は、時に「私はこんなに〜してあげているのに」という気持ちを生み出し、見返りを期待するようになります。

相手がその期待に応えられないと感じた時、不満や不信感が募りやすくなります。

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努力=愛情という強い認識

努力すること自体を愛情表現の絶対的な基準と捉えてしまい、相手の個性や価値観に合わせた愛情表現ができていない可能性があります。

それゆえに「コミュニケーション不足」が生じてしまうことも少なくないんです。

相手が本当に求めていることや、心地よいと感じることを十分に理解しないまま、一方的に「頑張って」しまっている場合がある、といいますか。

もちろん頑張ること自体は間違っていないのです。

問題はそう思い込みすぎている、という部分なんですよねぇ。

過去の経験からの学習

過去の恋愛経験、家族との関わりなどから

「頑張らなければ愛されない」

という誤った信念を強く抱いてしまっている可能性。

こればっかりは学んできたものなのでしょうがない、と思わず、今からでも自分の信念を緩めてみたいところですね。

頑張りすぎが引き起こす悪循環

このような頑張りすぎは、以下のような悪循環を生み出す可能性があります。

  1. 相手へのプレッシャー: 過度な気遣いや束縛のように感じられ、相手が窮屈に感じてしまうことがあります。
  2. 自身の疲弊と不満: 努力が報われないと感じ、精神的に疲弊し、不満が募る。
    コミュニケーション不足の深刻化: 本音で話し合うことができなくなり、すれ違いが拡大することがあります。
  3. 愛情表現の歪み: 本来の愛情が伝わりにくくなり、誤解やすれ違いが生じることがあります。。

頑張りすぎる恋愛から抜け出し、幸せな関係を築くためのヒント

手を繋ぐ男女

では、この頑張りすぎる恋愛から抜け出し、お互いを尊重し、心地よい関係を築くためにはどうすれば良いのでしょうか?

「頑張る」以外の愛情表現を見つける

相手の話をじっくり聞く、一緒にリラックスした時間を過ごすなど、心の繋がりを深める愛情表現を意識してみましょう。

そのような関わりの中で

「相手が本当に求めていることを知ろうとする意識を持つ」といいんですよね。

言葉だけでなく、相手の表情や態度から、本当に求めていること、心地よいと感じることを丁寧に観察しましょう。

すると、なんとなーく相手の気持が見えてくることもありますよ。

最初は「なんとなーく」ですけども(^^;

相手からの愛情サインに意識を向ける

些細な優しさや気遣いにも目を向け、「愛されている」という事実に気づく練習をしましょう。

とはいえ、これはなかなか難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

相手に愛されているという気持ちを受け止めるには「自分が自分を受け入れている」ことと、「相手の気持に触れようとする」という意識が必要になるからです。

何事も自分次第でなんとかしようとされている方にとっては、「よくわかんねー」と感じやすい部分かもしれないのですよ。

なので、ゆっくり丁寧に自分を見つめたり、人の思いに触れる(反応する)事から始めてみるといいと思うんですよね。

そういう意味でも、一人で我慢したり、察してもらおうとするのではなく、自分の気持ちなどを言葉で伝えることが大切になりますね。

時には「頼る」ことも大切にする

全て自分で抱え込まず、相手を信頼して頼ることで、二人の間の絆が深まります。

日頃から頼ることが苦手な自立タイプの人ほど、二人の間の出来事を事実としても、思いとしても自分だけで抱え込みがち、といいますか。

なので、自立を手放す、という意味合いでも「相手をあてにして頼る」ということが大切になることがありますね。

まぁ、抵抗感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんけど。

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頑張りすぎを手放し、ありのままの自分で愛される幸せを

恋愛や夫婦関係において、努力は大切ですが、度が過ぎるとお互いを苦しめてしまうことがあります。

大切なのは、相手の気持ちを尊重し、自分自身を大切にすること。

頑張りすぎるのではなく、ありのままの自分で愛される喜びを感じられるような、そんな温かい関係を築いていきましょう。

もし、ご自身の恋愛や夫婦関係で「頑張りすぎているかも…」と感じた方は、今日の記事を参考にしていただいて、自分自身のあり方を見つめ直していただいてもいいのかもしれませんね。

また、一人では難しいとお感じの場合はお気軽にご相談ください。

あなたの心が少しでも軽くなるよう、精一杯サポートさせていただきます。

ABOUT ME
浅野寿和 | 心理カウンセラー
恋愛・夫婦関係・対人関係・性格・生きづらさなど様々なお悩みに心理学でお答え。活動歴16年し、9,000件を超える臨床実績。口癖は「どんなことにも事情があるよね」。名古屋・東京・オンラインでカウンセリングを行う現場主義のカウンセラー。
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