夫婦のための心理学

対人関係で生じる自己犠牲が関係性を壊してしまう 〜対人関係と自己犠牲の心理〜

遠くを見つめる女性

『人のために頑張ったり、優しくすることは悪いことではない』

そう考えながらも、心のどこかでモヤモヤを感じていることはありませんか?

恋愛、ご夫婦、親子、対人関係・・・

さまざまな人との関わりの中で「よかれと思って」と自己犠牲をするとそれが問題やトラブルにつながることがあるんですよ。

実は、対人関係で自己犠牲をしてしまうことは、一見すると良いことのように思えますが、実は自分自身を傷つける行為。

自分自身を傷つける行為だからこそ、時には意図せず相手を傷つけてしまうこともあったりなかったり・・・。

でも、自分と相手、両方が幸せになれる関係を築くために、今できることがあるんです。

そこで今日は「自己犠牲が対人関係の限界を作る」をテーマに、自己犠牲のデメリットとその手放し方についてコラムにしていきたいと思います。

自己犠牲とは

自己犠牲とは「目的のために自分の欲望などを捨てて尽くすこと」を意味します。

自分の幸せや気持ちを後回しにして、損をすることをいとわずに働いたり、労力を費やしたりすること、と言えると思いますね。

例えば、何でも引き受けたり、自分の時間を犠牲にして人に尽くしたり。

このような自己犠牲は、一見すると奉仕・貢献のように見えますし、自己犠牲をしている本人も貢献しようと思っているのです。

ただ、自己犠牲には常に罪悪感が伴うわけですねぇ。

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罪悪感が伴うがゆえに、「どれだけ貢献しても足りないような気がする」といった気持ちを感じやすくなっちゃいます。

また、罪悪感があるがゆえに、相手から感謝されてもそれが受け取れません。

対人関係で自己犠牲をしてしまう人の特徴

また、対人関係で自己犠牲をしてしまう人にはいくつかの特徴があると言われています。

相手の気持ちを優先する

自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先し、相手の期待に応えようとするんですよね。

相手の気持ちを優先することが悪いことじゃないのは明白なんですが、それによって自分が苦しんだり傷ついちゃったりするとしんどいわけですね。

「いい人」でいたい気持ちが強い

相手にとっていい人でいたいという気持ちが強く、その内面では嫌われたくないという思いを抱えていて、自分の意見を言えずに我慢しがちなんですね。

自分を責める

何か問題が起こると、自分のせいだと考えてしまう傾向があるってことですね。

たとえお互いに非がある問題でも自分だけが悪いと感じたり、人によっては「周囲から自分が一番悪いと思わせるような状況」を自ら作り出すこともあります。

例えば、大切な人を自ら傷つけるような言動をする、自ら相手から非難されるような言動を取ってしまう、などがそれに当たります。

断ることが苦手

頼まれごとを断ることができず、つい引き受けてしまいます。

対人関係全般的に「NO」を伝えることが苦手で、できれば避けたいと思っています。

共感力がある

相手の気持ちに深く共感し、「その人のために何かしてあげたい」という気持ちが強い人が多いのも特徴。

この共感力は相手の困り事や相手の支えになるために重要なことなんですよ。

ただ、高い共感力が「相手に悪いから」「相手が困っているから」と自己犠牲を正当化する理由にもなり得るところがポイントだったりします。

対人関係における自己犠牲型と他者思考型の違い

人間関係においては、自己犠牲型の人と他者思考型の人というタイプがあります。

自己犠牲型

他者利益には興味が関心があるが自分の利益には無頓着。人に与える一方で自分の利益を損なってしまう。

他者思考型

他者利益と自己利益の双方に興味関心がある。受け取るより多く与えるが、自分にもしっかり他者から還元されていく。

対人関係での自己犠牲は自分自身を傷つける行為

自己犠牲は自分自身を傷つける行為なんです。

しかし、多くの自己犠牲は貢献や奉仕の意識、要は「よかれと思って」という意識を伴うことが多いので、なかなか気づかないかもしれませんね。

例えば、自己犠牲型の場合、対人関係の中で自分の利益を考えることはありません。

もちろんそれもまた意識としては「よかれと思って」行われているわけですよ。

ただ、それが原因で関係性を壊してしまうこともよく起こること。

実際の対人関係の中では

「相手からの感謝されても、それでは自分の気持ちは全然報われない」と感じたり

「自ら払った労力の価値をちっぽけに感じる」ことや

「相手が他の人の労力に対してにきちんと感謝や対価を示している様子を見るとモヤモヤ・イライラしてしまうこと」

もあるんですよねー。

このとき、自分自身が傷ついているので、うまく自分の感情や言動をコントロールできなくなってしまうんですよ。

例えば、意識では「相手のために見返りを求めず与えたい」と思っているのですが、実際は、自己犠牲した自分が報われると感じられなくなるわけです。

これも罪悪感や自己否定の影響から、相手からの好意や感謝も受け取れないので、気持ちの面で追い詰められてしまう、といいますかね。

ときには相手を責めたり、不満ばかり伝えてしまうことにもなるでしょう。

いつの間にか自分が傷ついていることに気づかず、無手当でまたなにかするものだから、すごく苦しくなったり、もういたたまれない気分になることも多くなるでしょう。

時には相手に悪意なく犠牲を強いてしまうこともあり、これはもうなんとも言えない気持ちになる瞬間なんですよね。

また、自己犠牲から一度でも関係性を壊してしまうと、もう元に戻らなかったり、なんであの時こんなことをしたんだろう、という後悔を作ってしまいますよね。

もちろんあなたが自己犠牲をしていると知らない相手にとっても、悲しい出来事です。

あなたの好意を受け取ろうとしたことが、結果的にあなたを苦しめてしまうことになるわけですから、相手も罪悪感を抱いてしまうのですよ。

なんだか切ない話ですけど、でも実際に起こり得ることです。

つまり、自己犠牲は、一見すると思いやりのある行動のように思えますが、長期的に見ると、心身に大きな負担をかけ、対人関係(恋愛、夫婦、友人関係など)の限界を作ってしまう可能性があるのですよね。

対人関係での自己犠牲から抜け出すために

では、自己犠牲から抜け出すために必要なことをいくつかご紹介していきます。

自分の心が傷ついていることに気づく

自己犠牲をしている人の心は、多く傷ついていますよ。

でも、その傷ってなかなか自覚できず、とかく「私はもっと頑張らなきゃ」「もっと相手のことを考えなきゃ」なんて感じで「〇〇でなきゃ思考」「べき思考」を強めていることも多々あります。

ただ、ここで出てくる「〇〇でなきゃ思考」「べき思考」こそ、犠牲を示し、かつ、自分が傷つくような生き方を選んでいることを示すんです。

そもそも「〇〇でなきゃ思考」「べき思考」自体、悪いとは思いませんが、自分のことを信頼したり、自分の気持ち優先の思考ではないんですよね。

だから、自分が傷ついているってことなんですよ。

ここに気づいて、自分が自分のために生きることを選ぶことも大切なことなんです。

自分の中の本心や「〇〇したい」と思う気持ちに寄り添う

実は、自分の本心やなにかを成し遂げたい気持ちを大切にできると、自ずと犠牲も手放せていけます。

なので、「〇〇でなきゃ思考」や「べき思考」が強くて見えなくなっている、さまざまな気持ちを、きちんと認めて、丁寧に寄り添っていくことが大切なんですよね。

特に「自分が〇〇したい」と思っている気持ちにきづけるようになると、楽になりやすいですね。

例えば、彼のために頑張らなきゃ!と思っている彼女さんがいるなら、「私は彼を愛したい」と思うだけでも、犠牲的なマインドが解消されることもあるんです。

ただ、あまりに犠牲が続いた場合は、すぐに解消されないこともあります。

そうであるならば、少し時間を賭けて、何度も自分の本心や「〇〇したい」という気持ちに寄り添い続けてあげてみてください。

人との境界線を明確にする

ただ、自己犠牲をしている方ほど「自分が自分のために生きることを選ぶこと」が結構難しいと感じる人も少なくないようですよ。

例えば、今までの経験で「自分ばかり優先して生きる人」と関わって傷ついたり、ひどい目にあったりしていると、「自分を優先する」ということを苦手にしていたり、嫌悪している人もいらっしゃる。

こういった場合は、自分を優先すること自体がとんでもなく悪いことだ、と感じてしまいますからね。(同時にすごく憧れるんですけど・・・)

こういった場合は人との境界線を明確にすることがおすすめです。

たとえあなたにとって嫌な「自分を優先する人」がいたとしても、「その人はその人、自分は自分、別にその人の人生と自分は関係ない」ぐらいの意識で、境界線を引いておくことが大切なポイントになりますね。

また、対人関係の中で癒着しやすい人は、癒着に関して見つめ直し、自分自身の心を自由にすることも大切な視点です。

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自分の気持ちを大切にする

自分の気持ちを無視せず、正直に表現することを心がけてみてください。

あなたが自分の気持ちを正直に表現することと、相手の気持ちを無視したり、否定することと同じではありませんよ。

相手の気持ちを優先することはときに良いことですが、自分の気持ちもしっかり大切にしましょう。

いくら相手のことを考える気持ちがあったとしても、辛いときは辛い、ムリな時はムリ、苦しいときは苦しい、と感じているはずです。

その気持ちにできるだけ早く気づいて、セルフケアしたり、相手と上手にコミュニケーションしていきましょう。

信頼できる人との関わりを持つ

ただ、自己犠牲している人って、この「自分の気持ちを大切にする」ということ自体がよくわからないと感じている場合も少なくないんですよね。

この場合、一つの考え方ですが、幼少期からの親御さんとの関係の影響などから、自分自身を抑制してしまうクセがついている可能性があります。

なので、悪い意味ではなく「人を当てにしていない」という対人関係のスタンスを構成していることがよくあるんです。

その視点から見ると「自己犠牲を手放すには信頼できる人との関わりを持つ」ということも大切なことです。

友達、仲間、先生、師匠、メンター、カウンセラー、など、信頼できる人との関わりの中で「人とのつながり」を感じ取ることもまた、自己犠牲を手放すポイントになりますよ。

自己犠牲は「幸せを相手次第にしている生き方」と理解する

実は、自己犠牲している人って、心から相手のことを考えている人も少なくないんですよ。

ただ、自己犠牲は、いわば「依存の最終形」のようなものなんです。

自分が犠牲することで、相手が報われたり、幸せになっていくことを狙うわけですから、相手が幸せになってくれないと意味をなさない、という意味での「依存」「相手次第の関係性の作り方」となるんですね。

だから、自分が報われない言動や生き方こそ「自分の幸せを相手次第にしている生き方」だと理解してみてください。

そして、自分が幸せになるために何をするか、何がしたいか、を考えていきましょう。

「NO」を言うこと

すべての要求にYESと言う必要はないんです。

「NO」を言う勇気を持ちましょう。

たとえ、相手の要求のすべてを満たさないと相手との関係が悪化するなら、それは対等な関係ではありませんしね。

また、相手のムリな要求に答え続けることは、相手にとっても良いことではないかもしれません。

だから、ムリなことはムリなんだ、と伝えることも、良好な関係を築くうえで大切なことだと知ってくださいね。

ムリなこと、辛いこと、苦しいこと、相手に気に入られたいカラなどの動機で動きたくなったとき、などは、できるだけ早い段階で自分の気持ちを冷静に見つめて、時には自分の本当の気持ちを見つめ直すことも大切ですよ。

最後に

いかがでしたでしょうか。

対人関係で自己犠牲をしてしまうことは、一見すると良いことのように思えますが、実は自分自身を傷つけることにつながっていきます。

その結果、関係性を壊してしまうことも起こり得ることなのですよ。

自己犠牲を手放していくことで、よりよい対人関係を築くことができます。

もし、自己犠牲のことで悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、カウンセリングなどで相談することをおすすめします。

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