さて、あなたは「上手に人に頼れずに困ってしまったこと」はないでしょうか?
カウンセリングの現場では、このような切実なお声を伺うこともしばしばありますよ。
ほんと、人に頼れないってつらい状況を作りやすいんです。
実際のカウンセリングで伺うことが多いケースとしては
- 仕事や家事を一人で抱え込んでしまって苦しい思いをしている
- 職場での仕事の分量が他の社員たちと比べて多いけれど、上司に相談しても取り合ってもらえずに毎日つらくなりながらも仕事を続けている
- 本当は休暇がほしいと思うけれど、周囲に迷惑をかけるかも?と思うとなかなか言い出せない
- 友だちと話したい、会いたいと思っても、「誘うと迷惑かな」(嫌われたくないな)と思い声をかけづらくなってしまう
- 夫(彼)や妻(彼女)に助けてほしいことがあっても、なかなか言い出せず一人で抱え込んで我慢してしまう
などでしょうか。
僕達は一人の力だけでは生きていけない生き物。
ご相談にキてくださる多くの方がそう理解されているのです。
しかし、その理解があったとしても、なぜか人を頼れずに苦しんでいらっしゃる方がいることも事実のようですよ。
そこで今回は「人に頼れない人の心理」の解説と、その対処法について考えていきたいと思います。
よろしければどうぞ。
人に頼れない人の心理
さて、人に頼れない人の心理として考えられることの一つに
「自分から人を頼ることがリスクだ、良くないことだと感じている可能性」
があります。
人に頼れない人の中には、過去の体験の影響から「人に頼るといいことが起きない、むしろ、悪いことをしているような気分になったり、辛いことが起きるのではないか」と思い込んでいらっしゃる方が少なくないのです。
まぁよくよく考えてみれば、人に頼ることでいい思いをしてこなかったのであれば、そりゃ頼らないほうがいいと学習するはずなんですよ。
だから、自分にどれだけ実力や地位があったとしても、今までたくさん周囲に貢献していたとしても、それでも人に頼れないと感じる人は存在する、と言えるんです。
また、人に頼れないとお悩みの方が、他人を信頼しない人だとは限らないですし、他人を尊重できない人だといい切ることもできないもの、と僕は考えています。
むしろ、人に頼れないことで自分を尊重できなくなっている方が多い、という印象が僕にはありますよ。
「アタッチメント」という考え方からみる人に頼れない心理
人に頼れない人の心理を見つめていくうえで、避けて通れないもの。
それが「アタッチメント」です。
「アタッチメント」とは、発達心理学において、乳幼児期に母親や養育者と子どもが築く強い情緒的な結びつき、「愛着」のことを指します。
イギリスの児童精神科医であるボウルビィBowlby,J.(1969)によって提唱された「アタッチメント理論(愛着理論)」では、幼いころに養育者との間で安全・安心を得る関係性を育むことが人格形成の基盤になると考えられています。
つまり、僕達は親子関係に代表される、自分と周囲の人との関わりの中で「人に頼ることとは、どういうことなのか」を学んでいく、と言えるんですよ。
安心感を感じられるアタッチメントを経験してきた人は、困ったときに、自分自身でしっかりと対処し、必要な時に人に助けを求められるようになるでしょう。
一方、安心感を感じにくいアタッチメントを経験してきた人の場合、困ったときに、人に頼ったり、相談することを難しいと感じたり、なかなか自分でチャレンジする勇気がもてなくなることもあるんですよね。
例えば、子供の頃に人に頼ることでつらい思いをしたり、批判されたり、「甘えてばばかりいるな」といった言動を何度もしてきたのならば
「人に頼ることって良くないこと、リスクのあること、危険なこと、傷つくこと」
と思うようになる人がいても不思議ではないですよね。
そんな経験を重ねてきた方は、どうしても人に頼るよりも、自分で物事を抱え込むようになるでしょう。
いわゆる「自立」を強めて、自分の中の「依存(心)」を嫌ったり、良くないものだとと耐えるようにもなるでしょう。
なお、幼少期のアタッチメントは重要ですが、それだけに限らず、アタッチメントの形成は僕達自身が今までの人生の中で、人と関わる際にどのような経験を積み重ねてきたか、によるところが大きいのです。
人に頼ることで生じた自己攻撃が「頼れない私」をつくる
このアタッチメントが示すことは、
「僕たちにとって、必要な時に安全や安心を与えてくれる人や場所の存在が、私たちの日々の活動や新しいチャレンジを支えている」
ということなんです。
つまり、僕達は誰にも支援されず、愛されず、理解されず、人をアテにしない生き方を続けて幸せや成功を収められるわけじゃない、ってことなんですよね。
だから、人に頼ることは必要なことで、悪いことではないのです。
が、なかなかそう思えない人にとって、人を頼ることは相当に胸が痛むこと、苦しいことにもなるんです。
これは本当に苦しいことなんですよ。
なお、そう感じる理由として考えられることは
- 過去に人を頼ったことで生じた失敗
- 人を頼ったことで他者からの批判や攻撃を受けた経験
- 世の中や周囲の大人が持っている価値観を学習した
- いじめを受けた経験がある、人に裏切られた経験がある
などなど、様々な要因で生じる心の痛み、もしくは自己攻撃を未だ抱えつづけているから、と考えられるんですよ。
言い換えるなら、人に頼れずお悩みの方でも、実は過去に人に頼る経験をしているのです。
が、その経験で生じた周囲の反応や、感じた心の痛み、自分自身が取り込んだ観念などが「人を頼る自分に対する自己攻撃」を作っていることがめちゃくちゃ多いのです。
このような自己攻撃が続く限り、「人に頼れない状態」が続いてしまうとも言えるんです。
人に頼れない人の2つのタイプ
なお、人に頼れない人には2つのタイプがあると言えます。
人に弱みを見せたくないタイプ
一つは、人に弱みを見せたくないタイプです。
何事でも物事を一人で抱え込む自立的な態度を示す傾向がありますね。
普段の人との関わりでも、どこか表面的な関わりに留める、もしくは積極的に関わろうとしない人が少なくないです。
ただ、人に弱みを見せたくないのは単純にプライドが高いから、とは言い切れないんですよ。
例えば、人に弱みを見せれば、自分の味方が助けてくれる可能性がありますよね?
これは「弱みを見せることで、自分と意図とは関係なく、自分が人を頼ってしまう状態ができあがる」ということを示すんです。
このとき「人に頼ることが悪いことである、傷つくことである」と感じているなら、そりゃ人に弱みを見せたくはなくなるはずなのです。
自分が悪いと感じることを人に示すことになるのですから。
よって、このタイプの人は人から愛されたり、支援を受けると「もうマジ放っておいてほしい!」といった反応を示すことが少なくないのです。
人に頼りたくないと思いながらも頼ってしまうタイプ
もう一つが、人に頼りたくないと思いながらも頼ってしまうタイプです。
これは「こんなに人を頼ったり、人に良くしてもらったら、相手に嫌われちゃうんじゃないか」という不安を抱え続けているタイプとも言えます。
どこか「人に頼ることが悪いことである、傷つくことである」と感じていながらも、人に弱みを見せてしまい、他者の支援を受けてしまう自分を、ものすごく恥ずかしい存在であると感じている事が少なくないんです。
【例えば仕事のシーンで・・・】
- 他の誰かの人の手を煩わせるだけで、自分をめちゃくちゃ責めますし。
- 上司から「これぐらいきちんとやってくれよ」と言われるだけで、なんだか絶望的な気持ちになることもありますし。
【例えば、恋愛のシーンで・・・】
- 「こんなに相手のことが好きで傍にいたいとか思っている自分は嫌われるんじゃないか」と思い込んでいたり。
- 「こんなに好きな人の傍にいたら自分が苦しいから、好きになる前に離れなきゃいけない」と感じて、自分から相手を突っぱねて後悔しまくったり。
- 人を好きになった途端に、自分が相手から嫌われるんじゃないか(好きになるという依存性を見せている自分は悪いことをしていると感じているので)と思い込み、好きな人を疑いまくったり。
まぁそんなようなことが起こります。
ちなみに・・・
なお、この2つのタイプは対極のようで実は対極ではありません。
何かしらのきっかけで、どちらのタイプも異なるタイプの方に移行することなんてことは皿に起こることなんですよね。
人に頼れない状態が生み出す問題
なお、この人に頼れない状態が生み出す問題は、ただ人に頼れない、という事実だけにとどまりません。
人に頼れないということは、常に自分の力でできる範囲のことしかできない、という状況を作るんですよね。
叶えたい夢、手に入れたい成功や幸せがあったとしても、人に頼る自分への自己攻撃性が強くなればなるほど
「それは自分には無理・・・」
と諦めるしかなくなるんです。
それは、夢や成功、幸せ、などに向かってチャレンジする勇気がないから、だけではないのです。
何をするにも「自力」しかリソースがないなら、未来に良きことが起きるという想像を持ちにくくなるのは当然のことだと思いませんか?
だから、今が苦しかろうが、現状に不満があろうが、人に頼らない生き方を選ぶことになるんですよね。
人に頼れない自分を変えていく方法
さて、ここからは「人に頼れない自分を変えていく方法」について考えていきたいと思います。
人に頼ることが悪いことだと思っていないかチェックする
まず「人に頼ることが悪いことだと思っていないかチェック」してみてください。
まぁ大人であれば多少なりとも「人に頼らず自力で」と思うものでしょう。
ただここでは
- どんな困難も自力で解決しなければならない
- 人を頼ることは相手に迷惑にしかならない
- 人に頼ることは弱いことだ
- 人に頼ると自分が傷ついてしまう
などの思い込みがないかチェックしてみていただければと思います。
そう思い込んでいることを恥じる必要はありませんので、素直にシンプルにチェックすればいいです。
まずは現状認識から始めていきましょう。
人に頼ることが悪いと思うなら、自分の価値なんてよくわからなくなると理解しましょう
よく「人に頼れる人は自分の価値をきちんと知っている」と言われることがありますね。
たしかにそうかもしれません。
が、僕の考えでは「自分の価値って人との関わりの中で育まれるものでもある」と思います。
いくら自分が努力しても、その結果が誰かの幸せや豊かさとつながっていないなら、なんだか寂しく感じませんか?
それって自信になると思います?
なので、人に頼れないとお悩みの方には、こんな発想を持ってみることを僕はおすすめしたいのです。
「人に頼ることが悪い、怖い、しんどいと思っていれば、自分の持てる実力や価値を推し量る参照先がないわけだから、自分の価値がよくわかんないよね」
僕の経験上、そう考えておかないと、人を頼れないとお悩みの方ほど
「人を頼ることで傷つくだとか、人を頼ることが悪いといった思い込みを抱えながら無理やり人に頼ろうとする」
なんてことが起きやすいのです。
これ、幸せなことでしょうか?
むしろ、自分への罰のようにも見えませんか?
なので、まずはこのように考えて、自分に無理をさせない発想や、自分を責めないような発想も一時的に必要になると僕は考えています。
人を頼ることに対する自己攻撃を手放そう
その上で、人を頼ることに対する自己攻撃に気づいて、手放していきましょう。
多くの自己攻撃は、自分以外の人の観念、考え、価値観であることが少なくないんです。
僕達はそれを学びながら自分のものとして捉えていくことが多いんです。
なので、ちょっと地道な作業にはなりますが、人を頼ることに対する自己攻撃を手放していくことがおすすめです。
例えば
「人に頼ることは悪いことだ」と思うなら、それってどこから学んだの?誰の声なの?という部分に気づいてみる。
もしかすると、社会の声かもしれないし、学校の中で学んだことかもしれないし、親がそう言い続けていたのかもしれない・・・と理解してみる。
重要なのは「犯人探しや犯人を批判すること」ではなく、「その声は他人の声なのだとしたら、自分の中に残しておかなくていいよね」と思うことです。
その上で、「じゃ、本当の自分は人に頼ることをどう思っていたんだろう?」と考えてみるといいですよ。
ちなみにこの作業は僕のカウンセリングでも結構大切にしている考え方なので、もし自分だけでは難しいや、と思われたら、カウンセリングの中で一緒に取り組む方法もありますよ。
シャドーの影響に気づいていく
「自分が困ったとき・辛いときに人を頼れなかった経験」を何度も積み重ねた人にとって
人を頼るということは「してはいけないこと」と認識される場合がありますよね。
ただ、そう思う分だけ「人に頼る他人」のことをすごく嫌ったり、批判的な視点で捉えてしまうことも増えてしまうと思うのです。
これは「本来は自分も人を頼りたかったけれど、そう生きれなかった自分をまざまざと見せつけられている状態」とも言えます。
このような人のこと(人を頼る要素)のことを「シャドー」と心理学では呼ぶことがあり
僕たちはこのシャドーを受け入れることがめちゃくちゃ嫌だ、大嫌いだ!と思うことが多いんです。
つまり、人に頼りたい気持ちもありながら、しかし絶対にそんな自分にはなりたくない、と意地を張る自分がいる、という矛盾が生じるんです。
だから、人に頼る方法学ぼうと思っても、なかなか素直に慣れなかったり、素直に実践できない場合もあるんです。
が、それもまた「しゃーないこと」で、そう感じるにも事情があるんです。
なので、「あぁ自分自身が人に頼ることをめちゃくちゃ嫌悪してんだな」と理解しておくこともおすすめです。
また、人を頼る他人の姿に強い批判を与えないように心がけておくことも大切なことですよ。
「他人が誰かを頼ることと、自分が人を頼れるようになることに何ら因果関係はない」ぐらい思っていると気が楽です。
あなたを支えてくれた人への感謝を取り戻す
また、いくら人に頼ることが苦手だとか、悪いことだとあなたが思い込んでいたとしても
「あなたのことを支えてくれた人、愛してくれた人」もいたはずです。
まぁその当時は気分が悪かったかもしれませんが・・・(^^;
「誰も助けてなんて頼んでねーよ」と悪態をついたかもしれませんが・・・(^^;
そのようなあなたを支えてくれた人、愛してくれた人への感謝の気持を取り戻すだけでも、随分人に頼りやすくなりますよ。
そのような経験は「相手の意志によってあなたが支えられた良き経験」ということを示すと思いますしね。
その相手があなたを支えることを何ら悪いことではない、と感じていた事実を受け止めることで、あなた自身が「人を頼ることは悪いことではないのかもな」と思いやすくなります。
周囲の人をよく観察するように心がけましょう
また、人に頼れない問題を解消するために、「周囲の人をよく観察するように意識する」という方法もありますね。
要は、
「あなたが人に興味を持つ」ことと
「あなたが人のことをよく見て、その人のためになることをする」ということを通じて
自分自身の中にある「人に頼ることは悪いこと、傷つくこと」という思い込みを手放してくというアプローチです。
例えば
- 相手の得意・苦手はなにか?
- 相手の好き・嫌いなことは何か?
- 相手の能力はどんなものか?
- 相手の性格はどのようなものか?
- 相手の趣味や習慣はなにか?
- 相手はどんなときに機嫌が良いか?
日頃から人を見て行動するようにすると、誰に何を、いつ、どうやって関われば(頼めば)相手が喜んでくれるのか、こちらの意見を受け止めてくれるのかがわかってきますしね。
人に頼ることも経験。経験を積めばできるようになりますよ。
今日のコラムはいかがでしたでしょうか?
最後まで僕は「人を頼る方法」について書いていますが、「人を頼れないことが悪いことではない」という部分については、どうかご理解いただけると幸いです。
例えば、自分で納得して人に頼らないという選択をしている人もいますし、その場合は全く問題なんてないんです。
頼らなくても大丈夫なのに、無理をして人に頼る必要はないのですよ。
また、「実際に過去の人間関係で生じた人に頼ることへの怖れや罪悪感をどう整えるか」については、カウンセリングセッションなどをご活用いただくことをおすすめします。
イメージなどを使ったアプローチが有効に作用する場合もありますのでね。
今回のコラムは以上です。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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