実際のご相談の中で「パートナーとの関係修復」にまつわるトピックを扱うことは少なくありません。
例えば「彼や彼女との関係を改善したい」「このままだと別れてしまいそうだから、なんとか良い関係に持っていきたい」といったお話です。
具体的には
自分に悪気なんてなかったんだけど、パートナーなりの愛情を理解せず(悪意なく)否定し続けてしまった。
パートナーなりに自分に向けてくれた愛情や理解、好意を『そんなの求めていない』『どうして気が利かないわけ?」といった風に否定し続けてしまった。
自分としては関係を続けたいのだけれど、なんとかリカバーできないか?
相手に負担をかけまいと自立しすぎてしまい、最も大切なパートナーに対しては更に迷惑をかけないようにと思うが故に、パートナーのために頑張ることを続けてきた反面、全くパートナーを頼らない振る舞いを見せてしまった。
その結果、悪意なく相手の愛情や好意を否定することになり、パートナーから「もうあなたとは一緒にいられない」と言われてしまった。
なぜこんなことになってしまったのか、と悩むばかりで、何とか関係を戻したいのだけれど、どうすればいいか。
こういったケースが典型例です。
ただ、この「関係修復」のプロセスって自分なりに頑張ってみても、なかなかいい結果が出ない場合もあるようです。
なぜなら「自分なりの好意を相手に向けても、なかなか相手がいい反応を返さないこと」が少なくないからです。
実際のカウンセリングでも「頑張って関わってみても、相手の反応がなかなか変わりません」「相手の態度がより頑なになっているように思えます」といったお声を伺うことがあるのです。
この状態になるととても不安になると思うんですよね。
ただ、実際の関係修復のプロセスでは、このような「相手の反応がすぐに変わらない・より頑なになる」といったことが起きる可能性は十分にあることです。
むしろ、予めこのようなことが起きると理解しておいたほうがいいと思いますよ。その上で対策を考えた方がより現実的かな、と思うのです。
では、「どうしてこのようなことが起きるのか」「このようなときにどう振る舞えばいいか」について今日はコラムにまとめますのでよろしければご覧ください。
Index
関係修復のプロセスには競争の心理とその罠がつきまとう
さて、実際の関係修復のプロセスは、頭で考えている以上に「イレギュラーなできごと」が起きる場合が少なくないんです。
いわゆる相手を理解したり、相手のために愛情を注いたので「仲直りできる」「相手も私を理解して受け入れてくれる」となるとは限らないのです。切ないですけどね。
むしろ、パートナーがなかなか素直な気持ちを見せてくれなかったり、時には頑なにこちらを拒否するような態度を取ることも少なくないんです。
いわば「心が折れそうになる瞬間」ですよね。カウンセリングでも「どれだけ相手のことを考えて接しても、なかなか良い結果が出ないから辛いです」というお声を伺うことも稀ではないんですよ。
ただ、そうお感じの方ほど、もしかすると「パートナーとの関係修復」のプロセスで登場しやすい「競争の心理」について知っておかれると、ご自分の気持ちも振る舞いも上手に操縦できるようになるかもしれないな、と思うのです。
関係修復のプロセスで登場する競争の心理とは
さて、皆さんに質問です。
仮に、あなたとパートナーとの関係が悪化して、もう一度いい関係に戻したいと思った時、あなたはどう振る舞いますか?
・・・。
皆さんなりに相手のことを考え、相手のために何か与えよう、関わろうとしないでしょうか。
もちろんそれは間違いではありません。
例えば、優しくする、気遣う、挨拶は欠かさない、相手の好きなご飯を作る、プレセントをする、相手の時間を闇雲に奪わない、などなど。
時には「自分も悪かったのだから、相手のために頑張らないと」と思い込んだりしませんか?
しかし、そのような思いや努力が相手に伝わらないと、やるせない気持ちにならないでしょうか?
「こちらから歩み寄っているのに、どうしていい反応を返してくれないのだろうか?」と思うことってないでしょうか。
実はこれ「相手も同じだ」とお気づきでしょうか。
ここが見えていないと、なかなか関係の修復って進まないなんてことが起きるんです。
言い換えるなら「相手もあなたに何か受け止めてほしい気持ちがある」ということです。
そこを一切無かったことにするような態度、つまり「悪意などないけれど一方的な関わり方」をしてしまうと、関係ってどんどん冷めていってしまうことも少なくないんです。
ここに全く悪意など感じ取れないけれど、しかし「競争の心理」が影響してい流ものです。
ここでの競争とは「どちらがどれだけ二人のことを考えているか・相手のことを考えているか」という競争です。
パートナーとの関係修復を行うために、相手に愛情を向ける、理解を向けること自体、全く間違っていない選択肢です。
しかし、相手の気持ちを受け止めず、一方的に愛情を注ぐとしたら、例えば「頑なにあなたの気持ちを受け取っていない相手」は、愛するという意味で「あなたに負けている状態になっている」という側面も見えてくるとは思いませんか?
もちろん「あなたの愛情を頑なに拒絶している」のパートナーであって、その行動の責任はパートナーにあります。
が、もしあなたのパートナーが「こちらとしても気持ちがあるし、こちらとしても相手のことを考えていたのに、そこを全く理解されないまま仲直りしたいよ、と言われても素直に応じることはできない」と考える人がいても不思議ではないのです。
そして、もし、パートナーがあなたの気持ちを受け取らないとしたら、それはあなたに対する何かしらのメッセージです。
特に普段から自立的で、仕事もプライベートも充実させたいと考えるようなパートナーの場合、「こちらの気持ちや考えを理解されない」ということが、自分の存在を否定されているように捉える人も少なくないんです。
ここでいかに愛するかばかり考えてしまうと、より「どちらが愛し上手か」という競争にハマってしまい、お互いに勝ち負けがついてしまうことにもなるんですよ。
つまり、関係修復のプロセスは「一人の価値観で考えてもあまりうまくいかない」ということであり、「お互いの気持ちを尊重する」ということができてはじめて前に進むようになる、ということなんですよね。
人は自分の影響を受け止めてくれた人に好感を抱く
そもそも人は「自分の影響(考え、在り方、愛情など)を受け止めてくれた人の影響は引き受けようとする」傾向があります。
例えば「自分の話をじっくり聞いてくれた上司の依頼は引き受けようと思う」「自分なりの考えを否定せず『それはいい考えだね』と受け止めてくれた学校の先生のことは今も慕っている」などが典型例です。
今の自分のことを見て、感じて、認めてくれる人って、やっぱり失いたくない人になりやすいんですよ。
この考え方を関係修復に用いるなら「パートナーなりに考えていることを否定せず、一旦受け止めてくれる人」のことは、悪いように扱いたくない、ということなのです。
だから、もし、あなたのパートナーが「自分だって君のために頑張っているのに」と言うとしたら、「パートナーはどうしてそこまで私のために頑張ろうとしていたのか」を深く理解して受け止める方がいいのです。
それぐらいパートナーにとっての私は「愛する価値がある存在だ」と受け止める方がいいのです。
時には辛いことですが、パートナーが「もう別れたい」と思っているとしたら、パートナーがそのような気持ちであることは否定せず受け止めていく方がいいのです。(相手の気持ちに従うしかないと思うことではありませんよ。)
なぜなら、それまでパートナーはパートナーなりにあなたのことを考えていたという事実を否定すると、より関係が悪化してしまうからですね。
確かに耳が痛いし、聞きたくないことかもしれないけれど、しかしそこを受け止めず「相手の気持ちをなんとか変えたい」とコントロールしようすると、それこそ相手の気持ちを否定することなり、お互いに不信感を抱く理由にもなります。
つまり、もしあなたとパートナーとの関係が悪化したとしたら、それはいい意味でもそうではない意味でも「全く悪意のないレベルで、お互いがお互いの影響を受け止めようとせず、自分なりの考え方を貫こうとしすぎていたからだ」と考えることができるのです。
相手を愛すること自体何ら問題ないのですが、相手にも気持ちがある、相手の気持ちも大切にするという部分が抜け落ちると、愛しているのに揉める、という構図ができあがるというわけです。
まぁめっちゃ切ない話ではあるんですけどね。しかし、これは「お互いに人を愛する気持ちがある」ということでもあり、ある意味、お互いがオトナであるからこそ生じるトラブルとも言えますね。
競争を抜け出すには「相互理解」を深めることと「愛されることに慣れる」こと
このような競争の罠にハマってしまった時は、ぜひ「正解」を探すより、「二人の答え」や「相互理解」を選ぶようにしてみてください。
つまり、関係修復を考えるならば、自分一人で結論を出したり、考えすぎないことが重要です。
もちろん、関係が悪化したからといって、自分の中にある「相手に対する愛情や好意」を否定する必要はありません。
何より必要なアイデアは「恋愛・結婚って一人でできるものじゃない」ということ。
また、「恋愛や結婚の質は、愛した事実の積み重ねだけでなく、お互いがそばにいてどのような気分になるかによって決まるもの」ということ。
いくら自分の愛し方に正当性があっても、お互いが寄り添っている時の感情が乱れているならば、それは幸せではない、ということです。
二人がどれだけ気持ちを通じ合わせて、お互いを理解し合えているかのほうが重要ってことなんです。
また、自分にも自分なりの愛し方、考え方があるように、相手にも同じものがあるんだ、と「お互いの対等さ」を意識することがポイントです。
この社会の中で生きていると、ついつい「自分一人で答えを出す」ということに大きな価値を見出してしまいがちですが、ことパートナーシップではそれが「悪意なく相手の愛情を否定する」という「競争の罠」となってしまうことがある、と覚えておいていただくといいのではないでしょうか。
つまり、今日、僕が言いたいことは一つ。
「自分には愛される価値があるのだ」ということをぜひ知っておいてほしいということです。
このことを通じて「パートナーが向けてくれている好意の価値」を実感できるあなたになってくださいね。
パートナーはあなたにそこを受け取ってもらいたいのです。それがうまくいかないから、一人で努力したり、いくら頑張っても辛いだけだから一人になりたい、と思っているのかもしれません。
「私がそんなに愛されているって、そんなことはないでしょ」
「むしろ、私の方が愛し上手だし」
ここでお互いの在り方、愛し方に対する理解が足りないと、いわばオトナ同士の恋愛や結婚生活で揉める理由になる、と理解してみてください。
確かに自分の考え・恋愛観、愛し方などにミスはあったかもしれないし、自分に非があれば認めて謝ることが必要ですけど、でもそれもこれも「いかに自分がパートナーから愛されていたのか」が分からなかったから生じたことかもしれませんしね。
そういう意味では「自己肯定感」を高めておくこともとても重要ですし、いわば「人から愛されることに上手に反応できるような意識づけ(感謝を習慣化する)」を取り入れると、パートナーとの関係も前向きになりやすいですよ。
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そしてこのプロセスを超えて相互理解の領域に進むことができるなら、その二人はより強い絆で結ばれることになることが多いです。
なぜなら、このような競争の裏側には「愛する人を大切にできる自分でありたい」という気持ちが存在しているからです。
だから、お互いが自分の気持ちにこだわりすぎることなく、また、パートナーや自分を理解して許していくことが重要なんです。
何が間違っているか、何が気に入らないか、ばかり考えていたり、そんな相手の気持ちを突っぱねる態度をとっていた自分をいつまでも罰していても、関係は前に進まないってことでしょうか。
だから僕は「今までのことはまぁしゃーないですよねぇ」とお伝えすることになるんですよ。
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