恋愛の心理学

「この人しかいない」という執着からの卒業を考える

「この人しかいない」という言葉には2つの意味がある

今日は「もうこの人しかいない」「この人じゃないとダメ」「この人がいなくなったら私どうにかなっちゃう」と感じるような恋をしている方からのご相談の事例のお話です。

「もうこの人しかいない」と思えるようなパートナーとの出会いって、素敵なものですよね。

しかし、この人しかいないと思っていたからこそ、二人の関係に距離が生まれると、ついパートナーやその関係性に執着してしまう場合もあるのかもしれません。

まさに別の意味で「もうこの人しかいない」と思うイメージですね。

つまり、「もうこの人しかいない」という言葉は、ちゃんと向き合って愛する(その覚悟を持つ)という意味にもなれば、「この人」を失いたくなくてしがみつくという意味にもなると僕は思います。

そして、今回のコラムは「後者」の意味でのお話です。

「もうこの人しかいない」と思える人は情熱的

二人の関係に距離ができて、なんだか関係が終わりそうになっていて、「この人じゃないとダメ」と思うなら、たしかにそれは執着といえる状態でしょう。

ただ、先に書いたように「もうこの人しかいない」という言葉は、使い方によっては意味が変わってくるわけですよね。

つまり、恋愛の中で「この人じゃないとダメ」と感じやすい人は、とても情熱的でパートナーを思う気持ちが強いタイプが多いように僕は思っています。

いわば相手のために本気になれるタイプの方が少なくないと僕は感じています。それは紛れもなく「価値」であり「強み」でしょう。

まぁ僕たちは、その意識のどこかで大切な人のために本気になれる自分でありたいと感じている部分があるのかもしれませんけどね。

だから、「もっとあのときこうしておけば」「なんであんな態度に出ちゃったんだろう」と後悔が多くなったり、素直になりきれなかった自分にダメ出しする方も少なくないのかなと思うんです。

 

が、物事は常に逆の意味がありまして、どこか「自分を大切にせず、相手一色に染まってしまう」そんな傾向もあるのかなと僕は感じています。

つまり、パートナーを強く思う方ほど、相手の影響を多く受けますし、いつしか「自分らしさ」を見失ってしまいやすいといえばそうかもしれません。

だから、言いたいことが言えなかったし、自分の気持ちを我慢することが増えて、つい自分でも望まない態度をとってしまう、といった恋愛パターンを持つのかもしれません。

本当の自分が表現できなかったと思うからこそ、「この人じゃないと」と思える、まるで自分の一部ぐらいになっているパートナーを失いそうになると、強い執着心が出てきてしまっても不思議ではないと思うんですね。

 

執着をしていると問題ばかりを意識する

また、人は執着をしている時、失うことばかりに意識が向いていて、「関係がどうしてここまで続いたのか」には意識が向かないものです。

これ、一つの執着のデメリットといえまして、人は何かしらに執着しているときに、何かしらの価値を感じているわけではないのですね。

むしろ、なにかがない・失う、という部分に意識を向けているものなんです。

だから、更に失う不安が強まるし「この人がいなくなったらどうしよう」と不安が強まり、更に執着してしまうものかもしれません。

そのとき、どこか「自分らしさ」や「自分の良さ」も見失っているのかもしれません。

だから、もっといい自分にならなきゃと思う可能性が高いんですけど、そもそも「自分じゃダメ」と思えば思うほど、執着は強まるものではないでしょうか。

訂正するといい部分とは、「そもそも自分らしさを表現できずにいた恋愛パターンやあなたの思いの伝え方」にあると僕は思うわけです。

そもそも一つの恋愛がうまくいかなかったからといって、それはとても切ないことですけれど、自分がダメだと決まったわけじゃありません。

だから、悩みすぎて余計な問題を作り自分を責めると、また相手に期待しちゃって失望したり、今の関係を取り戻したいという気持ちに執着するので、更に自分を見失うことにもなりかねない、と僕は思うのです。

 

自分の良さを見つめ、もっと自分を知ろう

だから、もし「この人しかいない」という執着が出てきているなら、もう少し自分を見つめてみよう、というサインとも考えられるんですね。

パートナーのことだけじゃなくて、自分のことをもう少し見つめてみようよ、と。

実際に、「私にはこの人しかいないのに」という強い不安を訴えてくださる方の多くは、心の片隅で「彼が全てではない」と思われていることがすごく多いんですね。

冷静に考えてみると、「彼が世界のすべてだなんて、そんなはずはないだろう」と思えるものでしょうから。

でも、「私が決めた人を愛しつづけたい」といった気持ちが、「彼が全てではない」という気持ちを打ち消していたり。

「もうこれ以上の人は出てこないのでは?」という不安が湧き上がってくると、彼が全てになってしまうんですよね。

それは自分らしさを見失い、自分の世界を相手に委ねすぎ、執着心が強めているから。

僕たちは、何かにしがみついているとき、自分を信頼しているかというと意外とそうではないかもしれませんしね。

また、比較的パートナーの影響を強く受けるタイプの方ほど、この不安がすごく出てきやすいかもしれません。

いい意味で、自分を殺せちゃうといいますか、自分を抑えることができるタイプの人なんですけどね。

だから、パートナーと向き合っているときも「もうこの人しかいない」と思えるほど、自分を抑えているわけです。

こうなると、パートナーが離れていくことに対して「今まで何をしてきたんだろう」と途方に暮れた感覚を覚えやすいわけです。

 

そんなときは、このとき自分を尊重しているかどうかを確かめてみるといいんです。それが癖になっていないだろうか、と。

そして、彼と出会う前と出会ったあとの自分の違いに気づくことはとても大切なことです。

「そもそもの自分らしさ」とはどんなものだったか、に気づこうとすることで、執着心ばかりに意識を向けなくなりますから、少し気持ちも軽くなります。

また、自分なりにパートナーを愛してきたことを否定的に見ないことも大切ですね。

確かに二人の関係に距離ができたのなら、それなりの事情があるのでしょう。そこを問題と見ることもできますが、僕が実際にお話を伺うケースに限って言えば、全てが問題だったとは思えないことが多いです。

もちろん一方的に愛を奪う関係や、一方的に被害者になる関係なら、それなりの問題があると言えますが、自分なりに心を尽くしてきたのなら、まず自分らしさを表現できていたかどうかは別にして、その自分の想いは認めてあげてほしいと思うのです。

妙な言い方になりますが、「もうこの人しかいない」存在とは、パートナーでもありながら、あなた自身でもあるはずなのです。

あなた自身も、誰かにとっての「変わりのない、この人しかいない」存在のはずです。

だから、自分のことを認める、受け入れるということを通じて、自分を取り戻すことはいい恋愛、いい関係性に繋がりますよ。

多くの方から「好きな人に『私しかいない・私じゃないとダメ』と思って欲しい」というお声を伺いますが、もし本当にそう思ってほしければ、自分が自分のことを大切な存在だ、と実感できる自分になることが先です。

少し想像していただきたいのですが、もし自分と一緒にいることで不安を強めるパートナーがいるとしたら、さて、あなたは相手のためになっている、相手の喜びになれていると素直に感じられるでしょうか。

よく相手に執着をすると関係性が悪くなりやすいといいますが、その理由は相手の気持ちを考えれば自ずと出てきますよね。

 

その自分のままで愛すれば、きっといい関係になれますし、相手の愛情や行動も自然に喜べます。

だから、今までのあなたを見つめ直し、自分自身をちっぽけに扱わない意識を持つことはいい関係になるために大切なんですね。

すると、「もうこの人しかいない」という(執着的な)気持ちは「こんなにも大切に思えるあなたに出会えてよかった」と変化していくものですよ。

こうなると、自分自身の気持ちもスッキリし、自由を感じられ、ときにはその関係性の再生に取り組めるものだと僕は思います。

 

※この記事は2020/5/20に「アメブロ・恋愛テクニック」に投稿した記事の再編集版です。

ABOUT ME
浅野 寿和
カウンセリングサービス所属心理カウンセラー。名古屋を中心に東京・大阪・福岡で〜旅人のように〜カウンセリング・セミナーを開催。心理学は現実で使えてなんぼ、がポリシー。
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