僕たちは生きている中でしばしば「自分を見失うこと」があるようです。
自分を見失うと
「自分のことなのに(感情・欲求などが)よくわからなくなる」
「何がしたいのか自分でもわからないと感じることが増える」
そんな状態になることが多くなりますね。
ときには本当につらい気持ちを抱えてしまうことも少なくありません。
ただ、自分を見失ったと感じたとき
一度、冷静に、丁寧に、自分を見つめていくことで、今まで見えていなかった自分、気づいていなかった自分を発見できることもあるようですよ。
そこで今回は「自分を見失ってしまう理由・心理」と、自分を見失ったときの自分とも向き合い方についてご紹介します。
よろしければどうぞ。
Index
「自分を見失う」とは
自分を見失うとは、何らかの事情で
「私、という概念をうまく感じ取れない、認識できない状態のこと」です。
私達は生きていく中で、自覚があるかどうかは別にして
「自分はこんな人」「自分はこれが好き」「自分はこんな目的のために生きている」
という認識を持つわけです。
これを心理学ではアイデンティティと呼ぶこともあれば、自己概念と呼ぶこともあります。
しかし、自分を見失う状態となると
それまで認識できた「自分は〇〇」がうまく感じ取れなくなってしまうのですね。
例えば
- 結婚や職場環境の変化、対人関係の変化など、自分自身の立場や環境の変化の影響を受けて自分をうまく感じ取れなくなった。
- 失恋や離婚などを経験し、アイデンティーの一部が欠落したように感じている。
- 今まで目標としてきたことを達成した(挫折した)ことで、目標を見失ってしまった。
- 今までの自分のあり方が、今の自分(成長した自分)にフィットしなくなった。
このような何らかの事情によって
「自分は一体何がしたいのだろう?」「何のために生きているのだろう?」
といった感覚を覚えることを、自分を見失うと表現する事が多いものです。
では、更に詳しく自分を見失う理由について解説していきます。
自分を見失う理由を解説します
自分を見失う理由にはさまざまなものが存在します。
つまり、自分を見失う理由は人それぞれで違う、といえますね。
ショックを伴う出来事が起きた
これはショックを伴う出来事から自分を見失うケースです。
例えば、失恋、離婚、リストラ、事故、失敗など
想定外の出来事と出会うことで、心がパニック状態になり、自分のことがよくわからなくなってしまうしまうのですね。
大きな喪失を経験した
これは喪失体験から自分を見失うケースです。
例えば
家族やパートナーの急な死、仲間や同僚の死など、身近な人の喪失などもあれば、
家族の喪失、天災によって家や生活環境を喪失したなど、自信の生活に関わる喪失もあります。
また、ときには受験失敗、婚約破棄などの挫折によって大切な何かを失ったと感じる場合もありますね。
職場、結婚などに伴う対人関係や環境の変化
職場での異動、対人関係や職場環境の変化、結婚による環境の変化など、自分自身を取り巻く対人関係、環境の大きな変化が起きる場合も、自分を見失いやすいです。
これは、自分自身の価値観やあり方を変化させなければ、と思う要因になります。
よって、今までの自分のままではいられない、という状況、環境が自分を見失う理由につながることが多いのですね。
特に、対人関係などでストレスを感じやすい人、環境や他者に過剰適応してしまうタイプの人に多い事例です。
役割意識が強まりすぎた
ここでの「役割」とは、「こうあるべきという姿に自分をおき、その役割が持つ規則や法則通りに生きること」を意味します。
人それぞれで「私はこうあるべきだ」と考えることってありますよね。
父として、母として、夫として、妻として、社会人としてこうあるべき・・・
このような役割意識は社会生活を送るうえで必要なものです。
しかし、これが必要以上強まると、「べき思考」が強化され、自分自身の自由な発想、感情のあり方を否定する時間が増えてしまうのです。
よって、恋愛や夫婦生活、仕事、日常生活をどんどん楽しめず、自分のやりたいことや自分自身の存在意義を見失ってしまうこともあります。
他人に振り回されすぎた(他者の影響を受けすぎた)
これは他人の影響を受けすぎて振り回されたことで自分を見失ったケースです。
例えば
親の意向の沿うように生きた結果、自分が何をやりたいのかすらわからなくなった。
パートナーに捨てられたくないと思い、相手に合わせていたら自分が何者かわからなくなってしまった。
他人に嫌われないうようにと意識しすぎていたため、自分のことがわからなくなった。
このように自分以外の誰かの影響や価値観に合わせていたため、自分が何者なのかわからなくなった、というケースです。
自分の欲求がよくわからなくなった
これは、感情を抑圧しすぎた、もしくは、過剰なストレスに耐えていたために、自分を見失ったように感じるケースです。
自分自身の感情を抑え続け生きていたり、過剰なストレスに対応しながら過ごしていると
「自分が何を感じているかわからない」
「何を欲しているのか(欲求)がよく分からない」
このように感じ、「自分を見失った」ような感覚を覚えることがあります。
この場合、自分の気持ちを優先できないのではなく、「自分のことがよく分からなくなる」のです。
人によっては、何が食べたいのかもわからない、何をしたいのかもわからない、という状態になることがあります。
目標・目的を失った
これは、ある程度人生の目的を達成したことによって、急に生きる目的や目標がわからなくなり、その結果自分を見失ったように感じるケースです。
典型例としては、退職後の鬱、空の巣症候群などが有名でしょうか。
また、まだまだ現役世代の方であっても、急に「何を目指して生きていけばいいのか?」と感じて悩むケースがあります。
これは新しい目的・目標設定の時期に起きやすいのですが、このとき「自分の過去(キャリア・経験)の価値がいまいち感じられなくなる」ことも多いのです。
まるで、今までの人生や経験の価値がなかったかのように感じるため、自分本来の姿を見失ってしまうのです。
自分を見失う状態を確認する方法
では、自分を見失っているかどうかを確認する方法はないのでしょうか。
実は、自分を見失った状態となると
「今まで感じていた欲求がよくわからなくなる」
そんな傾向が見られることが多いです。
例えば
- 食欲がなくなる
- 意欲的に取り組めていた仕事や家族などへの関心が薄くなる
- 楽しめていた好きなこと・趣味に没頭できなくなる
- 物事に飽きやすくなったり、興味を持てなくなる
などなど。
自分を見失うと、まるで自分が透明人間になったかのように感じられることがあります。
心理的には、自分の感情がよくわからなくなったり、何を感じているのかが捉えづらくなるのです。
よって、自分の欲しいもの、やりたいことなどを感じ取れなくなりやすいのです。
だから、恋愛や仕事などへの意欲や、パートナーや恋人への愛情、人生の目的・目標などがない、と感じとれなくなる、といいますかね。
考えても考えても「よくわからない」。
特にショックを伴う出来事から自分を見失った場合は、「ただただつらい気持ちばかりを感じる」こともあるでしょう。
自分を見失ったときの対処法
では、自分を見失っている状態から、もう一度自分を取り戻していくにはどうしたらいいのでしょうか。
自分の感情と丁寧に向き合う
見失った自分を取り戻す方法の1つが「自分の感情を丁寧に向き合うこと」です。
自分を見失うときほど「自分の感情(気持ち)がよく分からない」わけです。
特にショックが大きい出来事、喪失体験を経験すると、感情が一時的に麻痺することもあります。
そんなときは、焦らず丁寧に自分の感情と向き合っていくことが重要です。
例えば、つらいならつらい、悲しいなら悲しい、といったふうに。
ときには「何も感じない」という場合もあるかもしれませんが、それも「何も感じない」とう感覚、感情なので、そのまま一旦受け入れて大切にする方がいいです。
とにかく、今の自分の気持ちを丁寧に認めていくことです。
*
また、自分の欲求がよくわからなくなっているなら
「自分の好き」に素直になってみることもおすすめです。
例えば
「いろんな物事に対して好きか、嫌いか」で選択できるように心がけてみること。
そのために
「無理をして物事と判断しないこと」
「さまざまな価値観を一旦横において、自分なりの思いに注目すること」
がとても大切です。
あなたが「今、何を、どう感じているのか」が大切なこと。
様々な判断をする前に「今、自分はこう感じているんだな」と認めていくことを優先いていくといいでしょう。
ただ、これは「自分の感じ方に他人の同意を求める」という意味ではないんですよ。
「今、自分がこう感じているのだな」ということを自然に感じていくことを繰り返すことに意味があります。
自分らしさ・本当の幸せを見つめ直す
「自分らしさを見つめ直す」とは
「どんな自分も否定せず受け入れながら、自分の強みもそうではない部分を見つめる」ということ。
「本当の幸せを見つめ直す」とは
幸せになるための手段(お金、仕事、家族への愛、円滑な対人関係など)ばかりにこだわるのではなくて「そもそも自分はどんな幸せや未来を望んでいたのか」をもう一度考え直すことです。
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例えば、
頑張っているから素晴らしい、頑張っていないとダメ。
こんな能力があるからスゴい、能力がないことはダメ。
成功した自分は優れていて、失敗した自分はどうしようもない。
こういった思考や判断から、少し距離をおいて解き放たれていくことです。
頑張ることも、能力があることも、成功することも、幸せになる手段にはなりえますが
「自分らしさ」「自分の本当の幸せ」となるわけではないんですよね。
例えば、「何事も頑張れることが自分らしさ」と思う方もいるでしょうが、これは自分の量力や特性を示していて、「自分らしさ」を示しているわけではないんです。
「頑張ることで、得られる幸せこそが目的であり、自分らしい幸せ」なのです。
だから、じっくり自分らしさ、自分の本当の幸せを見つめてみてください。
「今まで頑張って生きてきたことは、一体何につながっていたのだろうか」といった感じで。
一時的に強いショックを受けた場合
この場合は、自分自身の感情のケアを何よりも優先することです。
もちろん現実的な問題(事故や病気など)が伴う場合は、その対処を優先させるべきでしょう。
が、まずは、自分がショックを受けていることに気づくこと。
そしてその自分に無理をさせず、信頼できる人に相談するなど、自分自身のケアを優先させるといいでしょう。
今の自分の状態を客観的に知るためにも、誰かに相談するという方法はおすすめです。
自分を見失った時に使えるエクササイズ
自分を見失ったと感じた時に使える具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
- 自分の今感じていることを「そう感じているんだな」と俯瞰して認めていく。ときには日記のようにノートに「毎日感じていることを書き出す」ことを続けて、後で読み返す。(感情日記)
- 今日できたこと・努力したことを認めるような習慣を持つ。
- 自分の自由に使える時間を作って、その時間は自由に振る舞う(何をしていてもダメ出ししない)
- とりあえず行きたいかも?と思った場所に行く、会いたい人に会うなど、自分の気持ちを優先する行動をとる。
- 相談ごとをするならば「今の自分に共感してくれる人」を優先して選んでみる
このエクササイズを実施する際は、エクササイズができない理由より、できる理由や、自分が「こうしよう」と思うことを大切にしてみてください。
たとえ、今の自分にうまくできないことがあっても、自分を否定しません。
そりゃしゃーないのだ、と感じていくことを意識します。
エクササイズの注意点
このエクササイズは「自信をつけること」を目的にしていません。
結果的に自信がつく場合もありますが、最初から自信をつけようと考えると混乱することになるかもしれません。
そもそも「見失った自分を取り戻こと」は、正しい自分に戻ることではないのです。
自分や、自分が感じている感情をもう一度信頼できるようになることです。
自分の感情を信頼できるから、その感情の中にある「好き」も「他人に対する愛情も思いやりも意欲」も使いこなせるようになるのです。
だから、たとえ今、自分を見失っていたとしても、どうかそんな自分を責めずにいただければと思います。
最後に
自分を見失ってしまうにも様々な理由があります。
つまり「自分を見失ってしまうこと」自体が悪いことではないのです。
だから、もう少し自分のことを大切にして見る意識を持ってみませんか?
自分の気持ちをコツコツ認めて満たしていく、もう一度自分を取り戻せますからね。焦らず着実に進んでみてくださいね。
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