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え?私、ただの都合のいい人になってない?
「都合のいい人」という言葉。
皆さんも聞いたり、時には他人から言われたりしたことってないでしょうか。
また、「都合のいい人」という言葉、あまりいい印象ではない言葉のように思いませんか。
実際、恋愛や夫婦の中で
「私って相手にとってただの都合のいい人になっているんじゃ?」
と思うなら、切ないし、ときには「私ってなんなんだろ」と悲しくなることもあるかもしれませんしね。
仕事でも、まるで「都合のいい人」のように扱われ、例えばバンバン雑用を押し付けられたり、過重な仕事量を投げられたり、なんてことも起こるやもしれません。
(行き過ぎるとパワハラとなるかもしれまんし、その場合はまた別の話になるのですが)
実際、都合のいい人から卒業したいというご相談、僕のもとに届いているんですよね。
そこで今回は「都合のいい人」の心理特徴と、その卒業方法について解説します。
よろしければどうぞ。
都合のいい人とは「相手にとって都合のいい人」を指す
さて、そもそも「都合のいい人」とはどんな人のことを言うのでしょう。
これは
「相手にとって都合のいい人」という意味になることが圧倒的に多いでしょう。
言い換えるなら
「自分にとって不都合が多いけれど、相手にとっては都合がいい状態である人」です。
「相手にとって都合のいい人」を目指す人もいる
また、「相手にとって都合のいい人」を目指す人もいるんですよね。
これは
「相手にとって都合のいい人になれば、私を受け入れてもらえる・嫌われない・傷つかない」
といった欲求から生じる行動だ、と言えます。
別の視点から見れば「自分が傷つかないための防衛戦略」とも言えるでしょう。
(実際には自分の都合は無視されるので、結構しんどい思いをすることになるとは思うのですが・・・。)
ただ、そもそも「正確に他人の都合に合わせること」は大変困難なことです。
僕たちは、人の気持ちを完全に理解できないわけですから、いくら他人にとって都合のいい人になろうとしても、完全に都合よく合わせることはできないのです。
だから、「相手にとって都合のいい人」を目指す人は、自分にミッションを課すように
パートナー、恋人、上司、親、仕事相手などの都合に必死になって合わせようとするわけです。
特に、相手の依存や勝手な都合を受け入れていることが多いのです。
そうしていないと不安だから。
言い方を変えるなら、自ら「相手の都合に合わせておくほうが無難だと感じている」のです。
そんな人ほど、自他共に「都合のいい人」だという認識を持つのでしょう。
「都合のいい人」の心理特徴を解説する
さて、心理的に見た「都合のいい人」の心理特徴は
自己犠牲的な行動だけでなく、「補償行為」が続くこと
だと言えるでしょう。
※補償行為という言葉の解説は次のコラムにありますのでよろしければご覧くださいね。
補償行為とは、いわば「埋め合わせの行為(行動)」です。
例えば、自分自身に自信がなかったり、周囲から尊敬されない、愛されない、必要とされていないと感じていると、その自信のなさや不安を埋め合わせるように
「相手にとって都合のいい人になろうとする」というわけです。
だから、どれだけ自分が相手のために素晴らしい行動をしていたとしても、結果的に相手の言動に振り回されやすいですし、どれだけ努力しても自分自身が報われた感覚を感じにくいのです。
これが補償行為の特徴でもあるんですね。
よって、辛い・しんどい思いをすることにもなります。
ときには、自分のことをとてもちっぽけに感じることにもなります。
ただし、劣等感や罪悪感が強いがゆえに
「人に嫌われたくない」「みんなに好かれたい」という目的を持っていると
「いつも相手にとって都合のいい人になろうとする」という場合もあると思います。
正義感や助けたい願望が強い人も都合のいい人をやめにくい
また、正義感や助けたい願望が強い人も「都合のいい人」になりやすい、と言えます。
もちろん「正義感」や「助けたい願望」がある事自体が問題だとは言えないのです。
相手のことを真に考え、支えることができるなら、それは素晴らしいことなのです。
ただ、例えば「自分が相手に必要とされたい」という欲求が満たされておらず
あまりに正義感や助けたい願望を強く持つと、必要以上に自己犠牲的な行動を続けてしまう場合があります。
例えば
相手を助けなきゃという思いの下、パートナーにどれだけ酷い扱いをされても助けようと思い続ける、とかね。
この場合、まるで「自分をモノ扱いする」ような「自尊心の欠如」が影響している場合があります。
表面的には献身的、貢献的に見えるのですが、自分自身への扱い方がひどいわけです。
だから、結果的に「誰かを助けられた」としても、自分も相手も「自分を助けられない」ので、周囲にいる人はあなたを助けようとしなくなるのです。
要は、自分をモノ扱いしていることをやめないので、周りはあなたのことを支えきれないわけです。
よって、いつも「周りの都合や事情」で行動することになるのです。
愛してくれなかった人への批判から「都合のいい人になる場合もある」
都合のいい人の中には、その深層心理で
「自分を愛してくれなかった人への批判」が隠れていることも少なくありません。
これは「自分を助けなかった人」「愛さなかった人」「理解しなかった人」への批判であることが多いです。
多くの場合、自分の親、家族、仲間など近しい人たちの批判として残ることが多いですね。
ただ、この批判は「投影」として現実に跳ね返ります。
※「投影」の解説は次のコラムにありますので、よろしければご覧くださいね。
よって、普段から(日常生活や仕事、恋愛や夫婦関係の中で)
自分のことばかり優先して人のことを考えない人
相手のことを考えず、助けない人
人に無関心で、放置する人
などへの攻撃性が強まっていくことにも繋がります。
よって、
「絶対にあんな冷たい人、いい加減な人、子供っぽい人になんてなりたくない!」
と思うようになる分だけ
「私は相手の都合を受け入れられる人間でいたい」と思うようにもなる。
ただ、そこで自分の気持も大事にできれば、都合のいい人にはならないのです。
が、深層心理レベルの他者批判が強くなっていると、「他者を強く批判している自分」をなかなか自分を肯定的に捉えることが難しくなるものなんです。
まぁ冷静に考えてみれば「そりゃそうだ」って話ですよね(^^;
つまり、他者批判が残り、自分を肯定的に捉えることができない分だけ
自分を大切にできず、相手の都合だけに合わせる「都合のいい人化」してしまう場合もあるんですね。
このような心理背景を持つ方の中には
「どんな人も放っておけない、助けるべき」
「自分の意見なんて関係ない。相手の意見を尊重するべき」
といった思いを持つ方も出てくるんですね。
「都合のいい人」をやめられなくなる理由も存在する
また、一度都合のいい人をはじめてしまうと
都合のいい人をやめたくともやめられない、と悩んでしまう性質があるとも言えます。
いわゆる「都合のいい人」の深層心理には
「私は人に嫌われる」という感覚や、「私は人から望まれない存在」という失望など
いわば自己嫌悪や罪悪感、無価値感などが強めに作用していることが多いです。
つまり
「私が私を嫌い」→「きっと人は私を嫌うだろう」→「都合のいい人になって嫌われないように」
そんな風に感じているわけです。
なので、「もういい加減、都合のいい人をやめよう」と思っても
「そんな事を考える私が悪い」「相手の都合に合わせられない私の落ち度だ」
と感じやすいのです。
(あなたを都合のいい人のままにしたいと考える人ほど、そのあなたの疑いに乗っかってくることもある、というわけです。)
そのため、都合のいい人ほど、普段から
自分の本音、気持ちを話したり
特に「Noという意思表示」をあまりなされないんですね。
「こちらの意思表示をして嫌われる(嫌われたらどうしよう)」と思うから、ですね。
すると、人から嫌われないために自分の意志を表示しない状況が続くので、どうしても相手の意思が優先されてしまう状況ができやすいのです。
ただ、自分の意思表示をすることに抵抗感がある「都合のいい人」ほど
「この状況のほうが安心する」
「相手のために私にできることがある」と感じてしまうのです。
これも「都合のいい人」をなかなか卒業できない理由の一つになるでしょう。
「都合のいい人」から卒業する方法を考える
では、最後に「都合のいい人」から卒業する方法を考えてみようと思います。
いくつかの考え方をご紹介しますので、参考になさってくださいね。
自分が自分を嫌っていることに気づいて、自分を認める
都合のいい人を卒業するためには、「自分を嫌わない、大切にすること」が、有効な方法となります。
ただし、ここで最も重要なことは
「今、自分自身が自分を必要以上に嫌っている」ということに気づくことなのですね。
「都合のいい人」ほど、実は「自分を評価していない、嫌っている」という側面があるとお伝えしました。
が、多く「都合がいい人状態」となっている人は
「私が私を嫌っている」という認識を持てずにいることが多いのです。
むしろ、「私以外の誰かが私を嫌っている」という認識を強めていていることが多いのです。
だから「いつも都合の良い人でいないと不安だ」と感じやすく、
相手の言いなりになったり、好きでもない相手にまで好かれよう、と頑張ってしまうのです。
ここに「都合のいい人」の弱点があるのです。
「他者からの承認や愛情で自分を大切に扱おう」という発想を持ちやすい、という弱点、ですね。
しかし、自分が自分を嫌っている以上、誰かに愛されたとして、それを認めることができないもの自分なのです。
このような自分のちょっとした弱点に気づいていただいて
「そうか、自分で自分を嫌っているのか。これからは自分を認めることが大切なのだな」
と、どうか知っていただきたいのです。
自分の中の「分かってもらいたい気持ち」を理解し受け止めてみる
また、都合のいい人の内面には
「愛されたい」「分かってもらいたい」という気持ちが強く存在することが多いと書きました。
そのあたりの気持ちを、誰かに分かってもらうことで安心しようとするので、都合のいい人担ってしまうことが多いわけです。
ただ、今、都合のいい人をされている方には、なかなか信じていただけないかもしれませんが
自分の中の気持ちは、自分で大切に理解してあげることで、ある程度消化できるものです。
これを「自己受容」「自己理解」と呼ぶこともありますよ。
自分の気持ちを丁寧に自分で受け止めていく。
それだけでココロが軽くなること、不安が軽減することもあるんですよ。
簡単なお願い事をしてみる、自分の意見を伝えてみる
また、小さなこと、できることでいいので、自分から簡単なお願い事をしてみる、自分の意見を丁寧に伝えることを意識してみてください。
相手にお願い事をする、意見を伝えることは、相手を信頼していないと難しいんですね。
(まぁ自分都合で生きている人は、人を信頼せずともニーズをぶつけてきますけど(^^;)
「それが怖いから都合のいい人になってんだよ!」
というお声もあろうかと思いますが、それは僕も承知の上で書いておりまする。
「自分から相手に関わる」という経験は、自分を信頼し、自分は自分でいいと思えるようになる要素になりますからね。
無理なくできる範囲でいいので、そのように始めていただくといいんじゃないでしょうか。
自分が許せないと思う人を理解する
もし、あなたにとっての近しい人の中に
「こんな人にはなりたくない」と強烈に思う人がいるとしたら
その人の影響で「都合のいい人になりすぎていないか」をチェックしてみてください。
そして、可能であれば「許せないと思う人を理解する」視点を持ってみましょう。
もちろん、あなたにとって許せない!と思う人を、そのまま許すことは困難なことですし、それは無茶ってもんです。
ただ、「自分が許せない人」がいる限り
「あんな人間にだけはなりたくない」という思いが強まり
その結果「他人にとって都合よい態度を取る」というパターンにハマっているならば
その根っこにある「許せない人」を「許す」ことで、都合のいい人から卒業できる場合もあるんですよね。
例えば、自分を理解しなかった親、家族、仲間など。
自分の気持ちを受け止めてくれようとしなかった母、だとかね。
過去に、「自分が社会や仲間と適合しようと努力してもうまくいかなかった」なんて場合、身近な家族だけでなく、社会や権威を許す、なんてことが求められる場合があります。
ここでの許しは、相手の事情を理解する、ということだけでなく、その許せない人の手を借りる、肩を借りるという意味合いが含まれる場合が多いです。
相手の力を借りてでも、自分を成長させようとする意思、意欲を持つことで、自分だけの力で世の中を生き抜く方法としての「都合のいい人であろう」とすることを止められるようにもなります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
もしあなたが「私って都合のいい人?」と思うとしたら
何より自分自身が切なく悲しい気持ちになるかもしれません。
どこか人に大切に扱われていないような、適当に扱われているような気持ちになるかもしれません。
が、もしそう感じたなら、まずは
「私が私の価値を下げないこと」
ということを考えてみてください。
そこで感じる悲しみ、寂しさ、やるせなさは、信頼できる人と分かち合いましょう。
可能であれば、カウンセリングなどで丁寧に扱っていく方法もありますよ。
なにより、どうか「私なんて」と自分を扱わないように心がけてみてくださいね。
どんな人も適当に扱われ、都合良く扱われるにふさわしい人はいないのですから。
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